表題番号:2008B-085 日付:2011/05/24
研究課題非線形発展方程式の解の安定性の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 良弘
研究成果概要
研究成果:
1.回転しながら平行移動する一つの剛体の周りの非圧縮性粘性流体の定常流の安定性を示した.証明の鍵は線形化問題に対応する連続半群の生成と,この半群の時間無限遠での漸近挙動を求めることにある.この線形化問題は多項式増大する係数を摂動項としてもつオゼン作用素の外部領域における初期値・境界値問題として定式化される.このように多項式増大する摂動項はこれまで全く扱われていない困難な問題であった.証明の鍵はレゾルベントをセクトリアル作用素の部分とセクトリアルではないが無限遠方でよい挙動をする部分に分けることにあった.

2.種々の領域での非圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間局所解の一意存在を示した.これまではヒルベルト空間の枠で考えられていた問題を,Lp-Lq最大正則性原理を示すことで,一般のバナッハ空間で示すことに成功した.これは自由境界問題では全く行われていない,ヴィエ.ストークス方程式をスケーリング不変な空間で扱うということを実現するために不可欠な考察である.非圧縮性粘性流体の自由境界問題の研究に新しい展開を与えた.またこれまでは液滴の落下や海面の運動に対応する数学的解析しか行われなかったのを,有界領域,外部領域,摂動半空間,摂動層領域,チューブ領域など物理的に自然に現れるあらゆる領域に対応する理論を構築した.

3.板の運動と熱力学第2法則による内部エネルギィ変化を考慮した,分散型と放物型の混合系に関する初期値.境界値問題が解析半群を生成することをLp枠で示した.この問題はこれまでヒルベルト空間枠でしか扱われていなかったのを,バナッハ空間枠での扱いの拡張した.これにより方程式系のもつ分散性と放物性の両面の共存状態を完全に解明した.