表題番号:2008B-083 日付:2009/03/11
研究課題低環境負荷型土壌洗浄プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大和田 秀二
研究成果概要
射撃場からの鉛汚染土壌を対象として、低負荷型の土壌洗浄プロセスの検討を行った。一般に土壌洗浄法では、水洗洗浄及び湿式篩いすることによって、粗粒部の浄化土壌と微粒部の汚染土壌に分離し、汚染土壌を減容化している。本研究においては、この汚染濃縮土壌に対し、さらに粉砕・分級・酸処理などの処理を加えることで、浄化土壌の回収量の増加及び汚染土壌の減容化を目指した。粉砕工程では、鉛分が濃縮していると予測される土壌粒子表面を選択的に粉砕することを意図して、特殊な混合効果を持つインテンシブミキサーを用いた粉砕を試みた。表面粉砕において影響の大きい操作条件であると考えられる含水率、粉砕時間について実験的に最適な条件を検討したところ、含水率25%、粉砕時間2分の条件を得た。このとき、粉砕産物の粒度分布をフィードの粒度分布と比較すると、粗粒部ではほぼ一致しているが微粒部の割合が増大していることが確認され、表面粉砕が良好に進行していると予測された。また、粉砕速度論を用いた解析と産物の粒度分布との被比較により、表面粉砕速度の推測を行ったが、その推測値と微粒群への鉛分濃縮割合との間には良好な相関が確認され、表面粉砕によって鉛分の微粒群への濃縮が可能であることがわかった。さらに、粉砕前後の土壌中の鉛分の形態を連続抽出法により調査したところ、表面粉砕は鉄またはマンガン酸化物または有機物に結合している鉛分に特に効果的であることが確認された。
 更なる鉛分の除去を目指し、粉砕産物の粗粒群に酸処理を行ったところ、表面粉砕なしに酸処理を行う場合に比べて、少量の酸添加でpHが下がり、鉛分の除去が可能であることが確認された。粉砕産物と同様に連続抽出法により鉛分の形態を調査したところ、酸処理は炭酸塩態の鉛分除去に特に効果的であることが確認された。したがって、表面粉砕と酸処理では処理に効果を発揮する鉛分形態が相互に補完しており、両者の組み合わせが鉛汚染土壌の洗浄に有効であることが確認された。