表題番号:2008B-076 日付:2009/03/23
研究課題技術シーズからその用途を開発する方法とその理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 黒須 誠治
研究成果概要
 本研究は、新技術を開発したのにもかかわらず、その用途がわからないまま商品化できていないシーズについて、その用途を思いつかせる方法を開発し、同時にその方法の理論を明らかにすることを目的とする。簡単にいうと、シーズを商品に結びつけるための発想法の開発である。発想法のひとつはすでに、荒削りだが提案ずみである。それを『できる展開法』と呼ぶ。
RF-ID(ICタグ)にこの方法を応用した。すなわち、RF-IDは今後さらにどのような用途に使えるか、について「できる展開法」を使用して発想してみた。これは筆者自身が行った。その結果、いままで考えつかなかった用途のいくつかが発想された。その結果を以下に示す日本包装学会と日本経営システム学会で発表した。
 この研究を通じて次の2つのことがあらたにわかり、また同時にそれが研究課題となることを認識できた。ひとつは、スローガンの設定の重要性、もうひとつはソフトの開発である。
(1)できる展開で「~できる」という表現で発想する場合、次の「~できる」は自然と浮かんでくるという点に依存していた。しかし、できる展開を繰り返し行って行くとその過程で発想が枯渇したり、行き詰まったりするなどの壁に当たる。このように発想が枯渇したり、行き詰まったりしても更に発想させたい場合には、行き詰まったポイントで「~できる」という表現から「~をさがそう」という表現に一時的に変える。「~をさがそう」という言葉に置き換えたことで発想の方向が純粋に何かを探す方向に向かい、用途が見つかり易くなるという効果がある。「~をさがそう」という表現をここではスローガンと呼ぶことにする。たとえば、「ICタグは小さな物にもはりつけることができる」というできる表現を思いついたら、「その情報を書き込みたい小さな物を探せ」というスローガンを設定する。そして実際にそれを探す。たとえば時計付きボールペンを想起する。(ボールペンについている時計の操作方法をICタグに書き込み、そのICタグをボールペンに貼る)。
(2)できる展開を表現するソフトの開発。ICタグのできる展開をしたところ、予想以上に多くの案が創出された。これを紙に書いていたのではとても能率が悪い。筆者はジャストシステムが販売しているアイデアマスターというソフトをとりあえず使用したが、できる展開法のソフトとしては不十分であった。今後、使いやすいソフトを改良・開発するべきであることを痛切に感じた。