表題番号:2008B-072 日付:2011/05/24
研究課題組織のイノベーションとルーティンの研究-創造性と合理性の架橋の探求-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 大月 博司
研究成果概要
本研究は、組織の多面的なイノベーションと組織変革のロジックに着目しながら、意図せざる結果という現象の原因を組織のルーティン活動に求め、創造性(イノベーション)と効率性(組織ルーティン)を同時に実現する組織の解明を図ることを目的とした。そして、創造的かつ効率的な組織のあり方について、組織の基本メカニズムである組織ルーティンを軸に、新たな理論モデルの構築を試みた。
近年、市場環境の複雑性・多様性を背景に、組織のイノベーションを創出する新たなロジックが多様に探求されてきた。たとえば、競争優位の確保のためポジショニングや資源ベースの観点が広く議論されてきたが、戦略イノベーションの実践プロセスにおいて、意思決定者は効率性を求めながら常にパラドックス状況に直面せざるを得ない。どのような組織メカニズムがあればイノベーションのパラドックスを回避・克服可能なのだろうか。そこで明らかにされたのが、時間軸の捉え方とイノベーションのプロセスのズレに着目することの必要性である。
本研究は、従来の研究動向を踏まえた上で、さらに新しい視点から、組織のイノベーションとそれを効率的に実現する組織のあり方について、一定の方向性が示されたと言える。そのため、組織のイノベーション論(創造性)と組織ルーティン論(効率性)の融合を目指す研究という新しい研究領域の開拓となった。今後の課題は、グローバル化と情報ネットワーク時代における意図せざる組織の不祥事現象について、組織ルーティンのメカニズムにおけるボトルネック解消によって解決可能であることを明らかにし、創造性と効率性の融合ばかりでなく、社会性をも取り込んだトライアドな図式として、組織のネガティブ面解消としての不祥事回避とポジティブ面開発としての組織イノベーションを、組織ルーティンのあり方を基軸とする理論的モデルの構築である。