表題番号:2008B-064 日付:2009/03/25
研究課題ゲノムにおける高頻度組換え部位の形成基盤:新視点からの解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 DNAの相同組換えにおいて、組換え部位が決定されるメカニズムはまだ解明されていない。ただし、特定の塩基配列は利用されていないことは明らかになっている。そこで本研究では、出芽酵母第3染色体を対象として、DNAの物理的特性の解析を行い、クロマチン内で組換え部位が決まるメカニズムを明らかにすることを目的とした。出芽酵母第3染色体を解析対象にした理由は、染色体内のすべての高頻度組換え部位が既に解明されているからである。なお、DNAの物理的特性にもさまざまなものがあるが、今回はDNAの柔軟性を解析した。DNAは柔軟性という視点で見ると不均一な分子である。柔らかい領域もあれば、硬い領域もある。さらに、異方的(anisotropic)に柔らかい領域もある。柔らかい領域とは、力を加えた時に曲がりやすい領域のことで、硬い領域とは、その逆の性質を示す領域のことである。そして、異方的に柔らかい領域とは、ある特定の方向には曲がりやすいが、それ以外の方向には曲がりにくい領域を指す。
 まず、第3染色体をトリヌクレオチドステップの単位に分け(ウィンドウとよぶ)、1 bpずつずらして(スライディングステップとよぶ)柔軟性の解析を行った。しかし、高頻度組換え部位だけが示す特有の特徴は見出せなかった。そこで次に、ウィンドウを5 bp、10 bp、50 bpと拡げ、スライディングステップもさまざまに変化させて解析を行った。その結果、高頻度組換え部位の多くに共通した興味深い特徴が明らかになった。現在、論文作成中であるのでその詳細には触れないが、DNAの柔軟性におけるこの特徴を認識するすることが組換え現象の最初のステップであると推察される。この認識過程がタンパク質(またはタンパク質複合体)によってなされるのか、あるいはその他のメカニズムが存在するのか、今後、引き続き検討する予定である。