表題番号:2008B-035 日付:2009/03/03
研究課題教育・対人援助職の力量形成と大学教育のあり方に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 村田 晶子
研究成果概要
 本研究は、文学学術院教育学コースの教員、OB、大学院生を中心として行う共同研究である。
今日、教育や対人支援職の専門的力量形成についての実践の認識に根源的な転換が生じている。複雑で多様な実践現場の文脈のなかで行われる一回限りの実践の中で、状況を読みとり、実践を組み替えていく力量は、従来の技術的合理性の伝達をモデルとする大学教育では貢献できなくなっている。
 そこで、教育学コースの多様な専門領域を生かして、学校の教員のみならず、社会教育、社会福祉、医療関係などの多様な領域の実践を対象とし、「教育・対人援助職」の力量を形成する大学教育のあり方の実践的検討を重ねている。
 今年度は昨年度までの大学院での修士論文作成過程を、大学院教育のあり方の検討対象としてとらえ返し、日本社会教育学会において報告したほか、例年実施している、実践の共同吟味を行う「ラウンドテーブル」と、教員による「シンポジウム」を内容とする「早稲田教育実践研究フォーラム」を10月に開催、院生を中心としてその記録「第3回早稲田教育実践研究フォーラム報告書」を作成し、その後共同での吟味の会(2月)も開いた。これらは、教員・対人援助職の力量形成に意味あるコミュニティの形成という点からからするならば、大学の枠を越えた外部に協働できる教員同士のコミュニティが不可欠であることも指摘しておかなければならない。
 実践の力量形成は、実践の省察を交流する「ラウンドテーブル」の組織化、実践のコミュニティが重要であること、そして、それによる教育・学習観の転換が重要であるということが明らかになってきた。無論それは、従来からアカデミックな大学院におかれている教育の哲学や思想などのカリキュラムの重要性を否定するものではない。
 また、今後の継続研究対象として、大阪府泉南郡熊取町のアトム共同保育所の実践記録を入手し、印刷。共同で検討する体制を組織した。