表題番号:2008B-006 日付:2011/11/11
研究課題民族紛争の国際的側面の研究-アジアのイスラム諸国によるボスニア支援の比較分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 准教授 久保 慶一
研究成果概要
本研究の課題であるアジアのイスラム諸国によるボスニア支援の実態を明らかにするため、2008年11月29日~12月9日までボスニア・ヘルツェゴビナ共和国を訪問し、現地調査を行った。この調査で、ボスニア内戦中から内戦後にかけてボスニアに対して積極的に支援を行っているマレーシアの大使館員・Khairul Nazan Abd Rahman氏(二等書記官)や、ボスニアの知識人が組織する団体(ボシュニャク知識人会議)のEsad Lukac書記、サラエヴォ大学経済学部のFikret Causevic教授、などの関係者・有識者に対して聞き取り調査を行い、ボスニア内戦中にマレーシアが行ったボスニア支援の内容や、戦後のボスニアの経済復興においてマレーシアが果たしている役割、マレーシアによるボスニア支援を可能にしたさまざまなマレーシアの国内要因、マレーシアによるボスニア支援に対するボスニアの知識人や市民の認識などについての理解を深めることができた。また、現地の滞在中に多数の書店、国立図書館、サラエヴォ歴史研究所などを訪問し、ボスニア内戦全般や戦後のボスニアにおける平和構築・経済復興等に関する書籍・資料を多数入手することができた。今回の現地調査により、マレーシアがボスニアに対して内戦中から内戦後にかけて積極的に支援や関与を続けてきていること、その背景には単にイスラム的紐帯や連帯感があるだけではなく、マレーシアが進めてきたボスニアからの留学生の積極的誘致によって形成されたマレーシア・ボスニア間の人的交流の蓄積や、ボスニアをヨーロッパ進出への足がかりにするというマレーシアの経済・外交上の戦略が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、ボスニアのNGOの間でマハティール首相をノーベル平和賞候補者として推薦しようとする動きがあったことからもわかるように、ボスニアの知識人や市民がマレーシアによる支援・関与をきわめて好意的に見ており、その意味でマレーシアの対ボスニア外交が成功していることが明らかとなった。