表題番号:2008B-003 日付:2011/11/10
研究課題ヴォルガ・ドイツ人の国外移住ーー北米、南米、ドイツへーー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 鈴木 健夫
研究成果概要
 エカチェリーナ2世およびアレクサンドル1世の誘致によりヴォルガ地方・南ロシアに入植したドイツ人移民は、当初は諸特権を与えられていたが、19世紀中葉になるとロシア化によりロシア人と同じ諸義務を課せられるようになった。そればかりか、反ドイツ主義が高まるなか、20世紀に入ると、1905年革命、第一次大戦、社会主義革命、内戦、大飢饉、スターリンによるシベリア・カザフスタン強制移住、第二次大戦、スターリン批判、ソ連崩壊という激動のなかで厳しい運命に晒された。このような過酷な環境のなかで、数多くの人々が命を落とし、数多くの人々が国外へと移住していった。本研究は、こうしたロシア・ドイツ人、特にヴォルガ・ドイツ人の祖国ドイツ移住とアメリカ移住の実態とその世界史的意義を解明することを目的としているが、まずは祖国ドイツ移住を対象とした。
 本年度の前期には特別研究期間を利用してドイツのシュトゥットガルト市(4月15日―7月15日)とラー市(7月16日―9月15日)に滞在し、主として第二次大戦後、とりわけソ連崩壊以後の大量のドイツ移住について、移民団体の機関紙、両市に居住する移住当事者の面接調査、研究文献(主としてInstitut fuer AuslandsbeziehungenおよびJohaness-Kuenzig-Institut所蔵)を通して検討し、ドイツの政策・受入状況、年毎の移住者数、移住者の社会的融合等々を明らかにした。後期は、以上の研究を継続するとともに、第二次大戦前をも視野に入れ、手元の文献を検討するとともに、Institut fuer Auslandsbeziehungenでの資料調査(2009年3月9日―24日)を実施し、当時の雑誌論文・著書等々を収集・検討し、戦前には第一次大戦・1920年代初頭の大飢饉、農業集団化の際に大きな移住の波があったことを確認した。今後は収集した文献をさらに分析し、論文「ヴォルガ・ドイツ人の祖国ドイツへの移住」(第1章 歴史的概観、第2章 牧師シュロイニングの生涯と活動、第3章 ソ連崩壊後の大量移住)を完成させる予定である。なお、本研究の過程で、ラー市長ヴォルフガング・ミュラー博士来日の折に同博士の公開講演会「成功した移民受入れ行政―ドイツ・ラー市の事例」(11月14日)を本学で実施した。