表題番号:2008A-910 日付:2009/03/26
研究課題元雑劇の再創作プロセスの調査ー旦本化と末本化によるプロットの改編を中心にー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 演劇博物館 助手 伴 俊典
研究成果概要
 本研究は元雑劇の再創作プロセスについて男女の主人公と見られる人物が登場する作品に着目し、それぞれ旦本、末本に分化する過程を追うことにより戯曲がどのような特徴に着目して劇化するか明らかにするものである。2008年度は以下の通り計画を進めた。

1.「元雑劇成立関係作品リスト」の作成
 『全元曲』、『古本元明雑劇』、「俗文学叢刊」(含『中国俗曲総目稿』)等に記載される諸雑劇の関連資料の中から男女両者が主人公となる故事をリスト化。特に演劇博物館所蔵の唱本37種も加えて調査を進めた。

2.「俗文学叢刊」所収の雑劇関連文献の整理
 戯曲関連資料のうち、現在最も注目されている「俗文学叢刊」所収の通俗演劇資料について、上記1にて目録上関係があると思われた書籍を取り上げ、中国中山大学黄仕忠教授(専門:中国古典戯曲版本学)の協力を仰ぎ、題目、版式等を調査した。その結果「俗文学叢刊」所収の唱本のテキストは内府本(宮廷の音楽署管理のテキスト)を集めたものである可能性が高いことがわかった。特に封面の有無が大きな問題であることが分かり、実本の閲覧を希望するが、実物閲覧の申請を拒否され、この調査を完了できなかった。

3.旦・末に分かれる故事の分析
 「元雑劇成立関係作品リスト」を使用し、一つの物語が旦本(女性主人公中心の筋立て)、末本(男性主人公中心の筋立て)に分かれる作品を分析。各作品の関係リストと「俗文学叢刊」中で発見した関連故事との関係を、①登場人物の数、②名前、③小説の筋との比較の諸点から歴史の経過にあわせて整理し検討した。その結果、「俗文学叢刊」所収の作品は、本事の筋を離れるものほど登場人物の関係が類型化する傾向があることが分かった。今後はこうした作品と、地方戯班の持つ演目の分布を調べ、原作との相違点をさらに精査する方針を決めた。

 以上の内容を調査したが、文部省科学研究費(スタートアップ)支給が認められ、台湾出張などの経費が引き上げられたため以上を特定課題研究の報告とする。