表題番号:2008A-888 日付:2010/10/22
研究課題潜在的連合の抑うつの予測可能性に関する検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助教 大月 友
研究成果概要
本課題は、平成20年度科学研究費補助金(若手スタートアップ)の採択に伴い、2008年8月31日をもって助成費の使用は停止されたものである。よって、それ以降は科学研究費補助金を基盤とした研究を進めてきた。以下に本研究の進捗状況を示すが、現段階で継続中の研究である。
この研究は、自己に関する潜在的連合(GNATという認知課題で測定される潜在的な認知構造)と既存の質問紙尺度との組み合わせによって、個人の将来の抑うつが予測可能であるか、ストレス反応との関連を含めた検討を行うことを目的として進められている。そのため、同年10月~12月にかけて計44名の協力を得て実験を開始した。実験では潜在的連合を測定するGNAT課題を行い、抑うつを測定する尺度(SDS)、抑うつスキーマを測定する尺度(DSS)、自尊感情を測定する尺度(RSES)への回答を求めた。潜在的連合は気分状態により結果に影響が出るという先行研究の指摘から、平常気分時と抑うつ気分時(気分誘導後)の2回にわたり測定を行った。その後、この44名の参加者に対して、実験から3ヵ月後(修了済み)と6ヵ月後に、フォローアップとしてストレス尺度と抑うつ尺度への回答を求めている。
2009年3月25日現在、1回目のフォローアップデータの収集が完了した段階であり、結果の整理をしている状況である。実験場面で測定されたデータに関する分析を行ったところ、抑うつ傾向高群と低群に対して、DSSとRSESという2つの顕在指標を検討したところ、有意な差が確認された。この結果から、先行研究の指摘どおり、抑うつ傾向の高いものは抑うつスキーマが強く、低い自尊感情であることが示された。一方、自己に対する潜在的連合を従属変数として検討したところ、両群に差はなく、それぞれ中性あるいは正の情動語との連合が強いことが示された。つまり、潜在指標を検討した場合、両群に差はなく、ニュートラルかポジティブな自尊感情が示されるという結果が得られた。この潜在的自尊心と顕在的自尊心の開きがどのような意味を持つか、今後のフォローアップデータとの関連から考察を進めていく予定である。