表題番号:2008A-876 日付:2009/03/22
研究課題低密度パリティ検査符号を用いたバースト消失訂正における符号構成とその理論的な性能解析に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 細谷 剛
研究成果概要
本課題で目指したことは,下記の1,2の項目についてである.これらの報告と,3で今後の方針について示す.

1.LR-LDPC符号の解析
本課題によって提案されたLR-LDPC 符号は,通常のLDPC符号の部分クラスであり,通常のLDPC符号よりもバースト消失性能が高いことが示された.また,LR-LDPC符号を構成する3つの符号において,それぞれの符号の性能は,疎行列の程度を示す指標である「密度」が決めてであることが判明した.ただし当初の計画とは違い,解析式の中身をさらに解析して性能の差異を明らかにすることは適わなかったが,これらの3つの符号が全て,通常のLDPC符号符号よりも性能が優れていることが性能が向上する条件であることも判明した.また,符号アンサンブルを用いて理論的に性能解析結果からもそのような傾向が明らかになり,同時にランダムに発生する消失に対しては如何なる性能の劣化も生じないことが示された.

2.解析式の厳密化
従来の解析では,復号が失敗する停止条件であるストッピングセットを用いて解析しているが,解析が容易な反面,得られる下界の厳密性に問題がある.そこで最小ストッピングセットと呼ばれる,ストッピングセットよりも細かく場合分けして計算できる条件を適用し,よりタイトなバースト消失訂正能力の下界を得ることができた.

3.今後の計画について
概ね,研究成果も得られたが,本質的な部分で明らかにすべきことが残っている.
本研究で得られた結果は,正則なLDPC符号を対象としており,よりクラスが広く,性能が優れた非正則LDPC符号へ拡張することも行った.正則の場合と同様に,「密度」と,非正則LDPC符号の性能を決定付ける重要な要素であるタナーグラフ上における「次数2の変数ノード」が性能を左右されていることが判明した.これらの示唆を生かし,今後の研究成果のさらなる発展が期待される.