表題番号:2008A-832 日付:2012/10/23
研究課題カリビアン/ラティーノ・ディアスポラの表現文化の比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 専任講師 浜 邦彦
研究成果概要
 本研究では,1950年代に英国を中心に開花した「カリビアン・ルネッサンス」を担った,英語圏カリブ海出身の作家・知識人・芸術家の移住経験と,それにつづくさまざまな移住作家・知識人たちによる表現を比較分析することを課題とし,カルチュラル・スタディーズ,ディアスポラ研究のさまざまな成果を参照しながら,20世紀における移住者の表現文化の思想史的・社会史的意義を明らかにすべく調査を進めた.
 その過程で,2008年にはディアスポラ研究関連の日本語書籍の刊行が相次ぎ,また日系ブラジル移民100周年,オバマ大統領就任,イスラエルによるガザの封鎖・攻撃なども重なって,カリビアン・ディアスポラ研究を,より広い世界史的文脈の中で再考する必要性を痛感させられた.こうしたさまざまな出来事をカリビアン/ラティーノ・ディアスポラの表現文化と重ねて再考すべく,論文「ユダヤ・ディアスポラとブラック・ディアスポラ」(赤尾光春・早尾貴紀編,『ディアスポラから世界を読む』,明石書店,2009年近刊)を執筆した.同論文では,C.L.R.ジェイムズからポール・ギルロイ,トニ・モリスンにいたる「ブラック・アトランティック」(ギルロイ)の思想圏を,ユダヤ・ディアスポラにおける近代性・人種主義・ホロコーストの問題と関わらせつつ論じている.
 早稲田大学メディア・シティズンシップ研究所の開設記念国際シンポジウム「メディア文化研究を社会に開く――批判的知の実践に向けて」(2008年11月15日~11月16日)には,ディアスポラ研究の観点からパネリストとして参加した.同研究所とは,今後も緊密に研究上の連携を図っていく.
 また,本研究の研究成果の一端は,大阪経済法科大学アジア太平洋研究センターの連続市民講座「うたに響くディアスポラ――移住者の心をたずねて」(2008年10月~12月,3回)の企画・コーディネイトにも活かされている.同講座の報告は,『アジア太平洋研究センター年報』第6号に掲載した.