表題番号:2008A-815 日付:2009/03/25
研究課題経済状況が悪化した高齢者におけるライフスタイルの再編ー高齢者の「生き残り」戦略ー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 准教授 木村 好美
研究成果概要
東京都老人総合研究所・ミシガン大学共同プロジェクト「後期高齢者の資産と健康に関する全国調査(AHEAD調査)」のデータ分析、先行研究や資料の検討を通じて、社会階層要因により生起する問題状況に高齢者自身がどのように対処しているのか、特に経済状況が悪化した層においてライフスタイルの再編、つまり余暇活動への参加/出費の抑制、人間関係・交際状況の変化(疎遠になる等)が起こっていないか、また、そのことが高齢者自身のwell-beingとどう関連しているのか、理論的・経験的に明らかにすることを試みた。
今回は特に、高齢期における余暇活動(旅行や外食、趣味・稽古ごと)の実施の有無と社会階層要因との関連を明らかにした。ロジスティック回帰分析の結果より、
1)余暇活動すべてにおいて有意な効果を持ったのは、経済状況ではなく、健康状態と学歴、人生に対する前向きな姿勢であった。ADL障害の程度が低く、教育年数が長く、人生に対して前向きな姿勢を持っている人ほどすべての余暇活動を実施する傾向が認められた。
2)経済状態との関連が見られたのは旅行の実施と趣味・稽古ごとの実施の有無で、現在の収入が高い人ほど過去1年間の間に旅行や趣味・稽古ごとを行っている。
3)3年前と現在との収入の変化(経済状況の悪化)は、旅行の有無についてのみ有意な効果を持っていた。すなわち、現在の収入が高く、現在の収入が過去(3年前)の収入より低い人ほど旅行に行っている。経済状況が悪化したにもかかわらず、旅行に行った人については、①子世代からの援助に加え、②職業生活からの引退による自由時間の増加、すなわち現役時代より収入は大幅に低下するが、自由時間は増加するため旅行に行くようになる、ということが考えられる。今回は時間不足のため、要因①②について明らかにすることが出来なかったが、今後検討を加えたい。
4)その他、旅行は年齢が若いほど、外食は女性の方が実施した人が多い。
ということが明らかになった。