表題番号:2008A-810 日付:2009/07/10
研究課題フランス法における金融機関の保証人に対する民事責任の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 助手 大沢 慎太郎
研究成果概要
 自己の支払能力を超える過剰な保証債務を負った保証人をどのように救済すべきかということは、保証制度における重要な問題の一つであるところ、フランス法においては、債権者、とりわけ、金融機関に、保証人に対する様々な注意義務を課すことによって、これに一定の解答を示している。本研究は、このようなフランス法における金融機関(債権者)の保証人に対する義務について考察することを目的としている。このうち、2008年度は、金融機関以外の債権者に対して課される義務等も含めた、特別法上の保証人の保護の枠組みについて注目し、その全体像を考察することを試みた。概要は以下のとおりである。
 フランス法においては、消費法典(Code de la consommation)をはじめとした特別法上の約30に及ぶ条文により、保証人が手厚く保護されている。これらは、1970年代後半から現在までの約30年間に渡って制定されたものの集積である。このうち、2003年8月1日の法律第721号による保証制度の改革前までに制定されたものについては、その時々の社会事情に応じて必要とされる政策目標の達成のために、契約の当事者や主たる債務の性質などを考慮し、規制の範囲や、内容および罰則等を調整して作られていることをその特徴として指摘することができる。したがって、今日、条文を見渡せば多種多様な規律が一見乱雑に配置されているように見えるものの、これらを立法理由やその社会背景等も含めて詳細に観察すると、相互に規制の範囲を棲み分けて、一定の秩序を持った保証人保護の枠組みを形成していることが確認できる。しかし、2003年法は、これら各種の規律を、その棲み分けの理由等を無視して、自然人が締結するほぼ全ての保証契約へと拡張するものであったため、従前の秩序が乱されることとなった。これら一連の立法過程とその結果の全体像を考察することは、保証契約の利便性と保証人の保護のバランスを考慮した、効率的な保証制度の設計を模索する上で、有益な示唆を与えるものといえる。