表題番号:2008A-808 日付:2011/11/08
研究課題日本における統一的行政計画策定手続の法制化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 田村 達久
研究成果概要
 行政の意思形成過程への国民・住民の参加をいかに法制度化していくかは、現代行政における重要な課題であり続けていること、および、行政計画策定手続制度とともにその課題の一つとされてきた、いわゆる行政立法手続に関する行政手続制度が、意見公募手続制度として、行政手続法(平成5年法律第88号)の平成17年改正によって当該法律のなかに整えられたことに鑑みると、国民・住民の権利利益へ大きな影響を与える行政計画類型(具体的には、土地利用規制関係の計画類型と公共事業実施関係の計画類型の2類型)について、その策定手続法制を研究することは緊要である。両類型に共通して検討されるべきことは、上述した国民・住民の計画策定への参加手続法制のあり方や、行政計画決定をめぐる争訟手続の構築をも考慮した上での事前の策定手続制度のあり方などである。これらの点について敷衍すると、これまでも意見書提出等による国民・住民の意見聴取の措置が策定手続に組み込まれてはいたが、果たして実効的なものとなっていたかには疑問があるところである。国民・住民の早期の権利利益保護の要請が一方に存するものの、行政過程の初期段階での意見申述は、行政の意思形成の公正性、適正性の確保のためのものと観念されるにとどまる虞もある。ただし、この点については、民主制に関する法観念の考察を要することでもあり、さらなる研究が必要である。また、地域の行政主体たる地方公共団体の意見申述についても、それが法的にはあまり重要視されてこなかった恨みがないとはいえない。しかし、国による計画策定手続であれば、国からの地方公共団体の自立性をも重視する現在の地方自治の法理念の下にあっては、そのことは変更を余儀なくされるであろう。ただし、国民・住民の意見との間での比重のかけ方の相違などを反映した策定手続制度をどのように構築するかについては、さらに考察を深めざるをえない。そして、これらのことはすべて、行政計画決定をめぐる争訟手続のあり方へ不可避的に影響を与える。単純に行政計画決定に抗告訴訟の対象性を認める事前手続制度とすればよいわけではない。さらに、土地利用規制関係の計画類型と公共事業実施関係の計画類型の2類型に分けた上での各類型ごとの統一的策定手続の考察が必要ではあるが、都市計画道路など都市計画事業として行われる公共事業計画を念頭に置いた場合などは、両類型の策定手続法制度間の連関をどの段階で、いかなるものとするか決定しなければならない。