表題番号:2008A-505 日付:2010/04/14
研究課題行為と結果の随伴性に関する脳内報酬系の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 正木 宏明
研究成果概要
 近年,脳内報酬系の情報処理に対する関心は益々高くなっている.たとえばTricomi et al (2004)はfMRIを用いて,線条体を構成する尾状核が報酬獲得行動の強化に大いに関係することを見出した.彼女らは,自分の意思で反応選択できるChoice条件と,予め決められた反応しかできないNoChoice条件を比較し,「行為と結果の随伴性(action-outcome contingency)」が成立するChoice条件にのみ尾状核の賦活を認めた.本研究では,行為と結果の随伴性に関わる脳内情報処理を事象関連電位とfMRIを用いて検討した.
 実験1では,ギャンブル様課題を用い,選択結果を知らせるフィードバック信号に先行して出現する刺激前陰性電位(stimulus-preceding negativity: SPN)を調べた.その結果,Choice条件のほうがNoChoice条件よりもSPNは大きくなり,行為と結果の随伴性はSPNの重要な生起要因であることが明らかとなった.さらにSPN増大は右前頭部で顕著であり,右島皮質の関与が示唆された.
 実験2では,SPNに及ぼす随伴性の効果について,報酬条件と罰条件に分けて検討した.その結果,報酬・罰にかかわらず,Choice条件のほうがNoChoice条件よりもSPNは大きかった.また右前頭部の振幅増大は報酬条件のほうが顕著だった.
 実験3では,上記のSPN増大が実際に基底核に起因したものかについてfMRIを用いて検討した.その結果,行為と結果の随伴性に伴い,尾状核と側坐核に顕著な賦活を認めた.また,右島皮質は報酬条件のほうが罰条件よりも強く賦活し,SPN結果と合致した.さらに損失条件では後部帯状回にも強い賦活を認めた.
 本研究の結果は,脳内報酬系の情報処理に行為と結果の随伴性が強く関与することを示している.