表題番号:2008A-076 日付:2009/04/29
研究課題中性子照射法による月面土壌・岩石の微量元素分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 長谷部 信行
研究成果概要
将来の月探査ミッションにおいて、表面探査車にガンマ線分光計を搭載して月表層の元素組成を定量化することで、月の科学の発展に、また月資源利用の貴重な資料として大きく貢献できる。月面の自然ガンマ線発生機構は、銀河宇宙線と月物質との核相互作用で生成した中性子によってガンマ線が発生する。しかし、この自然発生のγ線強度は弱く、検出可能な元素種も限られている。そこで中性子発生器を用いて能動的に中性子を生成して元素分析をすることで、従来の宇宙線を利用するガンマ線分光法ではなしえなかった微量元素を含む様々な元素を高精度かつ効率的(短時間)で計測が可能となる。

本研究では、初めに中性子放射化分析法を実際に月岩石試料に適用し、その有用性を確認した。中性子放射化分析では、原子炉からの熱中性子を利用した中性子捕獲反応により発生するガンマ線を、Ge検出器で測定し元素分析を行った。その結果、数100 mgという少量の試料から主要・微量元素合わせて約30種類もの元素を高確度・高精度で同時定量することができた。
月面上の中性子源としてD-T中性子発生管を用い14MeV中性子を発生させる。加速方式はコッククロフト・ウォルトン型とし、出力電圧100kV、ビーム電流10mAを目標とする。毎秒109個の中性子を発生させた場合、月地表からのガンマ線フラックスは銀河宇宙線誘導の場合と比較して1000倍の強度が実現可能である。実用化に向けて電源部の小型軽量化を検討しており、現時点では2kV・1mAの小型高圧電源の試作が完成し、その見通しを得ることができた。