表題番号:2008A-074 日付:2009/04/13
研究課題宇宙粒子線観測装置用多チャンネル回路システムの基礎開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鳥居 祥二
研究成果概要
本研究では国際宇宙ステーションに搭載を目的として開発を行っている電子、ガンマ線観測装置(CALET)の主要部分である全吸収型カロリメータ(TASC)に関する回路システムの開発を実施した。TASCは、BGOと呼ばれるシンチレータ(棒状)をX,Y方向交互に積層して構成される。宇宙線シャワーによるBGOによる発光現象をフォトダイオード(PD)により測定して、その3次元的な発達形状によりエネルギー、到来方向、粒子種別を決めることができる。エネルギー範囲が20MeVから1000TeVと実に8桁のエネルギー領域での測定が必要であるため、読み出し大ダイナミックレンジをもつ多チャンネル回路システムの開発を実施した。その結果、最重要な開発要素であった、低ノイズ型のプレアンプの基礎開発に成功している。
このシステムでは1個のBGOに面積の異なる2個のPDをパッケージ化したDual PDを用い、その各PDごとに今回開発をおこなったパッケージICで構成されるプレアンプを用いる。そして、さらに各プレアンプにゲインの異なるアンプを用いて、全体として4チャンネルの読み出しをおこなって、8桁に及ぶダイナミックレンジを確保することができる。現在は、今回の開発成果をもとにBGOを読み出すためのシステム全体の製作を実施している。
以上の研究のためには、実際の観測で必要とされる性能確認のためにシミュレーション計算を実施している。そして、実際にプロトタイプとして製作する気球搭載型装置への利用方法について検討も実施した。これらの発表のため修士課程院生各1名が国際会議に出席して発表を行っている。そのほか、開発報告や研究全体についての発表を国際会議および国内会議(物理学会、宇宙科学シンポジウムなど)で行っている。