表題番号:2008A-059 日付:2009/03/24
研究課題新規抗リーシュマニア剤の探索研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 中尾 洋一
研究成果概要
本研究はリーシュマニア症に苦しむ発展途上国の人々の窮状を救うべく、医薬品素材となる新規化合物の宝庫である海洋無脊椎動物から、抗リーシュマニア原虫作用を示す化合物を探索することを目的とした。まず、GFP導入原虫(LaEGFP)を用いた、細胞内アマスティゴートに対する迅速な薬剤試験方法を用いて海洋無脊椎動物抽出物から、抗原虫活性を有する化合物の探索、同定を目的とし、研究代表者が日本近海で採集した海洋生物からスクリーニングサンプル作り、活性化合物の単離・構造決定、および化合物の誘導体化は研究代表者が行い、抗原虫活性試験は研究協力者が行った。
スクリーニングサンプル:採集した海洋無脊椎動物をアルコールで抽出し、濃縮後水とクロロホルムで二層分配し、それぞれの層を濃縮してスクリーニングサンプルとした。
スクリーニング:以上のように調整したスクリーニングサンプル計1360を抗原虫活性スクリーニングに付した。方法としては、96穴プレートにマウスマクロファージ細胞J774を1x106個まき、その後2x107個の原虫で感染させた。16時間後に非感染原虫をPBS洗浄により除いた後、培地によって希釈された化合物を加えて48時間培養した。その後蛍光プレートリーダーで各ウェルの蛍光強度を測定して、その強度により原虫数および薬剤の抗原虫活性の算出を行った。アンフォテリシンBを用いた試験においては薬剤存在下において原虫由来GFPの減衰がみられ、蛍光強度から算出されたIC50の値は、従来の方法(顕微鏡観察による原虫数の計測)を用いて求められた値と極めて近い値を示し、この方法の有用性が確認されている。
活性化合物の単離・構造決定:スクリーニングで浮かび上がった鹿児島県奄美大島産の海綿サンプルから抗原虫活性を指標として3種の活性化合物の単離を行い、単離した化合物の構造をはMS、NMRなどのスペクトル分析により既知のaaptamine (1)、isoaaptamine (2)、および9-demethylaaptamine (3)であると同定した。
化合物の活性評価:以上の得られた化合物1-3について抗原虫活性を調べたところ、LaEGFPに対してそれぞれIC50 2.3、0.9、および0.5ug/mLの抗原虫活性を示した。
また、鹿児島県産の海綿から単離された新規化合物glacilioether Bに抗リーシュマニア原虫活性を見出すとともに(68%阻害 10ug/mL)、別種の海綿から新規抗リーシュマニア化合物ciliatamides AおよびBを見出した(IC50 10ug/mL)。