表題番号:2008A-050 日付:2009/03/11
研究課題マウス皮膚の時計遺伝子発現に対する環境刺激応答
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
時計遺伝子の発現パターンの解析により、時計遺伝子は、中心時計である視交叉上核のみならず脳や末梢臓器に発現することがわかった。すなわち体内時計はシステムとして成り立っており、それぞれの臓器に発現している時計遺伝子が、ローカル時計として機能している可能性が指摘された。今回、マウスの皮膚に発現する時計遺伝子の機能を探る目的で、皮膚に対する温度刺激の応答性について、サーカディアンリズムの観点から調べた。(1)まず、皮膚に発現するPer1とPer2遺伝子発現リズムを調べた。その結果、顕著なリズムを示し、昼間低く、夜間高いという、これまでに知られていた肝臓のリズムパターンと類似したパターンを示すことが判明した。(2)次にマウスを37℃と41℃に30分間温浴させ、その後皮膚の時計遺伝子発現を調べた。Per1遺伝子発現は温度依存的に低下したが、Per2遺伝子発現には変化はみられなかった。したがって、Per1遺伝子発現の一過性の低下が同調刺激になる可能性が指摘された。そこで次に毎日の一定時刻の温度刺激が体内時計を同調させるか否かについて調べた。(3)Per2::luciferaseノックインマウスあるいはBmal1::luciferaseのトランスゼニックマウスを用いて、皮膚や肝臓のluciferaseによる生物発光リズムの位相を測定することで、温度刺激が位相変容作用を示すか否かについて調べた。1日を4等分して、朝、昼、夕方、夜間のいずれかに、マウスを41℃で温浴を30分行わせ、この操作を5日間行った。その後、マウスの皮膚や肝臓を取り出し、ルミサイクルという装置を用いて、生物発光リズムを調べた。その結果、朝や夜間に温浴させたマウスの時計遺伝子発現リズム位相が前進していた。すなわち人に外挿すると、夕方から就寝にかけて風呂に入る習慣がついている人は、夜型から朝型に移せる可能性が示唆された。