表題番号:2008A-047 日付:2009/03/10
研究課題コラーゲン様構造を基盤とした細胞内デリバリーツールの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
本研究では、Arg-richなコラーゲン様ペプチドの細胞内移行性に必要な構造的要因の調査を目的とした。さらに、三重らせん上のArg側鎖の配向が細胞内移行性に与える影響についても検討した。
配列中にD-Proを導入し三重らせんを形成できない三量体ペプチド、三重らせん上の同一方向にArg残基を配置したペプチド、および、Arg残基をばらばらに配置したヘテロ三量体ペプチドをデザイン・合成した。細胞内移行性は①Streptavidin-ZAPの細胞内への運搬、②共焦点レーザー顕微鏡および③FACS(蛍光セルソータ)により評価した。
①Streptavidin-ZAPの細胞内運搬よる評価。まず、ペプチド鎖にビオチンを付加し、Streptavidin-ZAP (細胞毒性を有する)と混合して複合体を形成させた。その後、Streptavidin-ZAPとビオチン付加ペプチドの複合体含有培地中でHeLa細胞を培養し、ペプチド鎖に伴って細胞内に輸送されたサポリン(ZAP)が、細胞をどの程度死滅させたかをMTTアッセイで定量化した。
②共焦点レーザー顕微鏡による評価。蛍光標識したペプチド含有培地中でHeLa細胞を培養後、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。
③FACSによる評価。蛍光標識したペプチド含有培地中でHeLa細胞を培養後、FACSにより蛍光強度を測定して、ペプチド鎖の細胞内移行性を定量化した。
円偏光二色性スペクトル測定の結果から、ペプチドは37℃において分子デザインから期待された三次構造をとっていることを確認した。また、細胞を用いた実験の結果から、細胞内移行性は、三重らせん構造を形成しないペプチドよりも、Arg側鎖の位置を固定したペプチドの方が、優れていることがわかった。また、コラーゲン様ペプチドの細胞内移行性は、三重らせん上のArg側鎖の配向に依存し、Arg側鎖を同一方向に配置したペプチドはより効率的な細胞内移行を示すことが明らかになった。本研究から、コラーゲン様ペプチドの細胞内移行には、三重らせん構造形成によるArg側鎖の集積化が重要であり、また、三重らせん上のArg側鎖の分布密度が重要な役割を果たしていることが示唆された。