表題番号:2008A-011 日付:2009/03/24
研究課題横光利一直筆原稿の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 十重田 裕一
研究成果概要
2008年度単年度の研究期間で重視したのは、横光利一の直筆原稿の蒐集と閲覧を通じて、これまで行ってきた当該研究テーマをより発展させる基盤をつくることであった。いくつかの図書館で調査を行うと同時に、横光利一の原稿(書簡)を購入するなど、その成果は十分に達成することができた。また、これまで調査をした横光利一の直筆原稿の見直しもあわせて行い、研究課題にかかげた「総合的」な研究としてまとめるべく、調査と考察を進めた。そうすることで得た成果の公表は、2009年度から2010年度にかけて行う予定である。すでに準備を整え、日本近代文学の直筆原稿を総合的に検討する研究会での報告を経た後に、学術論文としてまとめる段取りがついている。本格的な研究成果の公表は2009年度以降となるものの、2008年度中にも、関連する研究成果を公にしている。その一つが、「1926年、文学と映画との遭遇」(『比較文学研究』、東大比較文学会、2008年11月)である。横光利一に関するこの論文は、2008年5月にアメリカ合衆国のコロンビア大学(キーンセンター)、ハーバード大学(ライシャワーセンター)での講演をもとに学術論文としてまとめたものである。なお、発表は次年度になるが、すでに校正を終えている研究論文に、「メディアに映し出される〈文学の神様〉の欧州紀行――一九三六年、横光利一の外遊とその報道をめぐって――」(『横光利一 欧洲との出会い――「歐洲紀行」から「旅愁」へ――』、おうふう、2009年5月刊行予定)がある。この論文では、横光利一の欧州旅行での手帳を参照し、新聞・雑誌などのマス・メディアに掲載された横光をめぐる言説を考察しながら、彼の外遊とその報道について検討している。