表題番号:2007B-299 日付:2009/12/08
研究課題台湾蘭嶼ヤミ族の作陶技術に関する民族誌的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 齋藤 正憲
研究成果概要
 台湾原住民の土器文化を研究する立場から、ヤミ族の土器製作技術について、民族誌的調査を実施してきた。当該研究費の助成を受けた本年度は、比較データを取得するために、台湾本島アミ族の土器製作技術を観察・記録するべく、12月に現地調査を実施した。現地調査は、花蓮を拠点とし、豊浜村方面を中心に、情報の収集に努めた。
 伝統工芸を良く保持する蘭嶼ヤミ族に比較して、アミ族ではかなり以前に土器づくりの伝統が断絶していたことが確認された。かつて土器生産センターとして知られた集落Tapalongにおいても、かなりの高齢者に話しを聞いたものの、土器づくりを実際に見た経験はなかった。
 一方で、近年の原住民文化復興の流れの中で、豊浜村では有志グループ(Alik工作房)がアミ族の土器づくり復原に取り組んでおり、その中心的人物蔡賢忠氏に話しを聞くことができた。かつて猫公(Vakon)と呼ばれた豊浜村の土器づくりは、高名な陳奇録氏により報告がなされており、その伝統は比較的良く復原されていることが明らかとなった。蔡氏からは、土器づくりの様子を撮影した写真データも頂戴しており、今後、その技術的側面についてレポートを作成する予定である。
 断片的・間接的ながら、アミ族の土器製作技術を確認したことによって、ヤミ族の状況をより客観的に眺める足がかりを得ることができたと考える。すなわち、アミ族の場合、かつてはTapalongを中心とする土器流通ネットワークを形成し、それに取り残される形で豊浜村の土器づくりが残されたが、近代における陶磁器の生産と流通がかつてのネットワークを飲み込む形で土器文化を消滅させたのである。よって、離島である蘭嶼の土器文化が残された最大の要因は、その地理的孤立であると考えるのが妥当であることが確認された。今後、より詳細に両者の技術的変差に着目しつつ、研究を継続したいと考えている。