表題番号:2007B-276 日付:2008/03/19
研究課題擬似過渡解析法に基づく大規模集積回路網の大域的求解法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 井上 靖秋
研究成果概要
 1.研究計画の概要
本研究では,集積回路の回路シミュレーションにおける非収束問題に対する擬似過渡解析法の致命欠点を克服する新たな手法を実現する第一段階として,そのアルゴリズムの中核となる擬似エレメントの開発と有効性の検証を行う.
1.1 擬似過渡解析の擬似エレメントの開発
従来の擬似過渡解析法では,擬似エレメントとして純粋なリアクタンス素子が用いられていた.このために,解くべき回路が新たに発振するという致命欠点があった.これを克服する新たな複合擬似エレメントとそれを用いた解法アルゴリズムを開発する.
1.2 擬似エレメント実装手法の開発
複合擬似エレメントを用いる手法を回路シミュレータに実装する場合に,新たに変数と方程式の数が増加するという問題が生じる.これを解決するために,変数と方程式の数が解くべき回路と同じサイズで,ヤコビ行列の構造の変更が不要な実装手法を開発する.
1.3 数値実験と有効性の検証
前述複合擬似エレメントと実装手法を回路シミュレータSPICE3にソースコードレベルで試験的に実装する.更に,実用回路を用いた数値実験により,前述擬似過渡解析法の有効性を検証する.
 2.研究成果
(1) 複合擬似エレメントの開発: 旧来の擬似エレメントの概念を拡張して,リアクタンス虚数軸直線上からインピーダンス(アドミタンス)平面へと拡張する複合擬似エレメントについて検討し,実用回路に有効なエレメントの組み合わせ,時変特性について最適化を行った.
(2)実装手法の開発: 複合擬似エレメント実装の際に生ずる変数と方程式の増大に対処する新たな実装手法を検討し,複合擬似素子の変数を縮退する手法を開発した.変数と方程式の数が解くべき回路方程式と同じサイズで,ヤコビ行列の構造の変更が不要である.
(3)数値実験と有効性の検証:SPICE3の内部構造を調査して,前述手法をソースコードレベルでSPICE3に実装した.それを用いて数値実験し,アルゴリズムの制御パラメータの最適化等を行い,提案手法(複合擬似エレメント,実装手法)の有効性を検証した.