表題番号:2007B-263 日付:2008/06/30
研究課題国際保健のグローバル・ガバナンス―ミレニアム開発目標へ向けた国連と民間企業の連携
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院アジア太平洋研究科 准教授 勝間 靖
研究成果概要
 「ミレニアム開発目標」の目標1のうち、極度の貧困(1日あたり1ドル未満)で生活する人口比率は、3分の1(1990年)から5分の1(2004年)へと低下しており、2015年までの目標の達成が見込まれる。しかし、サブサハラ・アフリカを見ると、46.8%(1990年)から41.1%(2004年)までしか減少しておらず、2015年までの半減は困難だと言われている。また、目標2の初等教育における就学率は、途上国全体では80%(1991年)から88%(2005年)へと上がっている。サブサハラ・アフリカだけを見ても、54%(1991年)から70%(2005年)へと比較的順調に上昇しているが、それでもこのままのペースでは初等教育の完全普及は難しい。このように、サブサハラ・アフリカでの「ミレニアム開発目標」の達成の難しさがデータで示されている。
 本研究では、とくに国際保健の分野に注目したが、やはり、そこでもサブサハラ・アフリカにおける課題が見えてくる。目標4については、5歳未満児の死亡率は世界的に減少傾向にある。出生1,000人あたりの5歳未満児の死亡を見ると、1990年に106人だったのが、2005年には83人へと減っている。しかし、サブサハラ・アフリカでは、出生1,000人あたり166人と依然として高い数値を示している。多くは予防可能な疾病によるものであるが、とくにアフリカにおいてはマラリアが第1の死因となっていることは注目される。
 目標6のターゲットの1つがマラリアに関するものである。また「ミレニアム開発目標」に加えて、アフリカの政府首脳によるイニシアティブとして『アブジャ宣言』(2000年)がある。ここでは、2005年までに妊産婦と5歳未満児への殺虫処理済みの蚊帳の普及率を60%まで上昇させることがターゲットとされたが、達成した国はわずか(マラウィ、ザンビアなど)であった。サブサハラ・アフリカ全体において、殺虫処理済み蚊帳の下で寝ている5歳未満児の比率は5%でしかなく、従って、2010年までの目標値である80%の達成は困難だと考えられている。目標6のもう1つのターゲットは、HIV/エイズに関するものである。国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)の報告書は、最近になって数値を下方修正したが、それでも、エイズによって命を失う人びとの数は、2007年に世界全体で210万人であった。そのうちの210万人はサブサハラ・アフリカであった。HIVとともに生きる人びとは、3,320万人(2007年)で、サブサハラ・アフリカだけで2,250万人(2007年)を占めた。2007年の新たなHIV感染者は、世界全体で210万人であったが、そのうち160万人がサブサハラ・アフリカであった。
 本研究では、子どもの健康と教育の視点から、サブサハラ・アフリカにおいて何を優先すべきかについて、マラリアとHIV/エイズを中心に議論した。とくに、マラリア予防のための蚊帳の普及と、HIV感染予防のための健康教育を取り上げた。そして、両者に共通して必要とされる戦略として、パートナーシップを重視すべきことを論じた。