表題番号:2007B-239 日付:2008/03/25
研究課題わが国のトップスポーツ・リーグにおける地域密着型クラブの創生過程に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 原田 宗彦
研究成果概要
本研究は、イレブン・ミリオン・プロジェクトの一環として、サッカーファンの経験価値を探るという文脈の中で、横浜F・マリノスがファンに提供する経験価値を複数の調査によって明らかにし、今後のクラブ経営に活用できるデータを集め、分析し、形式知として現場にフィードバックすることを目的とした。研究は、予備調査-1(2007年6月9日F・マリノスvs千葉:日産スタジアム) において、親和図法のブランドイメージ、顧客インターフェース情報、観戦経験(自由記述)のデータを収集した。 予備調査-2(2007年8月29日F・マリノスvsFC東京:三ッ沢球技場)においては、経験価値尺度を作成するための自由記述データを収集した。 そして2007年9月22日にF・マリノスvs浦和レッズ(日産スタジアム)において本調査を実施して、経験価値インタビュー、顧客インターフェース、経験価値尺度に関するデータを収集した。本研究で得られた知見を総合的に解釈した結果、ファンビジネスのマネジメントにおいては、以下の4点に留意して戦略を立てるべきであることが明らかになった:1.ファンの観戦行動は遊び(自由時間行動)であり、レジャーである。したがってそこには、自発性と目的性が不可欠の要素となる;2.遊びが根底にあるために、従来の消費者行動理論が役立たない。すなわち、真面目なあるいは合理的な経済活動を前提にした消費者行動理論が適応できない世界である;3.ホモ・エコノミクスという経済学が好む人間観からホモ・ルーデンスという人間観への転換が必要である ⇒ 経済的合理性から快楽消費へ;4.ファン行動は社会行動であり、ファン・コミュニティは共感反応の喚起装置である。したがって、スポーツは友人や仲間で見たほうが絶対に楽しい。浦和と横浜の観戦時同伴者数、そして友人の割合を比べた場合、同伴者数は、7.4人対2.4人と浦和が圧倒的に多人数での観戦となっている。また友人の割合も77.6%と横浜の約2倍の割合であるなど、共感反応を起こす仲間の多さが、経験価値と深く結び付いているのではないかということが示唆された。