表題番号:2007B-235 日付:2012/11/05
研究課題健康増進をアウトカムとしたスポーツ・身体活動プロモーション効果のモデル構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
健康増進のために適切な運動習慣を持つことが大切であることは論を待たない。しかしながら、「運動は身体によい」という理論だけでは人々がスポーツや運動へと誘うには不十分であり、「如何に人々の行動を変容させるか」という観点の重要性が指摘されているが、ソーシャルマーケティングを活用したプロモーションの効果に関しては、その重要性が説かれているものの十分な検証がなされていない。
我々は、上述の問題認識に基づき、人々がスポーツ・運動あるいは日常身体活動という健康行動に時間を費やすような行動変容を誘発するための人為的働きかけ(プロモーション)の効果について、予測・検証を可能とするような定量モデルを将来的に構築することを目指して本研究を行った。
本年度は、「ウォーキング」を普及促進させるためのプロモーションの方法論と効果について、まず始めに、マーケティングの観点から「ウォーキングプロモーションの分析モデル」について俯瞰した上で、「地域でのウォーキングイベント参加へのプロモーション手法の効果検証」、「通信型ウォーキングプログラム参加者の特徴」、「携帯メールを利用したモバイルウォーキングプログラム参加者の特徴」について、実践検証を行った。
その結果、地域でのウォーキングイベント参加者募集のプロモーション効果としては、 (1)手渡しや学校を通じた連絡によるチラシ配布により1.0~1.2%の応答率がある,(2)設置チラシを持参した者は応答率が高い,(3)新聞折込チラシは参加者を集める有効な手段であるが,配布枚数に対する応答率は低い,(4)市報は費用がかからないことや自治体によって発行され信頼感のあることなどを考慮するとプロモーションの重要な方法の1つである,(5)友人からの誘い・口コミは,チラシや市報という情報を提供する方法と比較して,「参加する」という行動まで影響を与える重要な手段である,の5 つ知見がえられた。また、通信型ウォーキングプログラム携帯電話のメールマガジンによるウォーキングプログラムなどの新たな媒体の活用によって、通常の地域イベントとは異なるターゲットに訴求することができることがわかった。これらの個別事例のデータを通じて、「プロモーション」→「行動変化」→「健康効果」の各々の変数間の関連について検討することが、今後の課題である。