表題番号:2007B-233 日付:2008/02/20
研究課題少子社会における子育て支援をめぐる経験の質的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助手 松木 洋人
研究成果概要
本研究の目的は、近年、拡充の傾向にある子育て支援の現状を、それに関わる人々の語りや相互行為の分析を通じて考察することにある。その目的を達成するために、本年度は保育園などの施設で子育て支援に携わっている関東圏および北海道の保育士および子育て広場の担当者、計16名にインタビュー調査を行った。現在、これらの調査の成果を踏まえた論文を執筆中である。
また、今年度は、前年度までのインタビュー調査の成果を学会誌『家族社会学研究』に研究論文として発表した。その要点は以下の通りである。子育て支援の提供者の語りを分析することによって、彼らが自らの経験をどのように理解しているのかを考察した。子育て支援の理念は、従来の公的領域と私的領域の区分の再編成を含意しているが、その一方で、家族に育児責任を帰属する規範はなお根強く存在している。このような状況において、外部の人間が子育てに対して支援を行うことは、家族責任についての規範的理解との間でのジレンマを提供者にもたらす可能性がある。提供者がそのようなジレンマに直面することを回避するには、提供者が自らの活動を家族関係への支援として定義することが有効であるが、提供者が子どもの親との関係を十分に形成できない状況では、職務の限定性が生じることは避けられない。支援の受け手の限定化を前提としつつ、提供者がその限定対象を創出するような働きかけを子どもの親に対して行うことが、子育て支援を家族支援として行うための一つの実践的な解決となる。
なお、本研究の基礎となる作業として、現在の少子化が親による子育てについての意味づけのどのような変化によってもたらされているかを検討する計量社会学的研究にも従事した。この成果は9月に日本家族社会学会で報告し、現在、学会誌『家族研究年報』に投稿中である。