表題番号:2007B-221 日付:2008/03/24
研究課題居住空間における子どもの「居場所」に関する発達行動学的検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 根ケ山 光一
(連携研究者) 共立女子大学家政学部 専任講師 河原 紀子
(連携研究者) 駒沢女子短期大学 教授 福川 須美
(連携研究者) 東洋英和女学院大学 准教授 星 順子
研究成果概要
「保育園」と「家庭」という子どもの生活にとって重要な意味をもつ2つのシステムに注目し,その間を往復する子どもが,その場面移行に伴ってどのような行動の調整を行いつつそれに適応しているか,あるいはそれがどう発達するかを通じて,居住空間における子どもの居場所とは何かを検討した。本研究では特に(1)一般の住宅において子どもと血縁のない保育士がひとりもしくは少人数で数人以内の子どもを世話する「家庭型保育室」という場面における子どもの行動を定常場面と食事場面で追跡することと,(2)離島での地域に埋め込まれた保育における家庭と保育園の場面移行に焦点化して調査した。
家庭型保育室の観察では,家庭型保育室に2か月齢から通う幼児2名(第3子の男児と第2子の女児)を対象に、保育室と家庭のそれぞれで1歳半ばから2歳半ばまで3か月ごとに,保育室と家庭において各1回半日間、対象児の様子をデジタルビデオカメラにより自然観察した。観察データのうち定常場面と食場面を分析した。結果は両場面ともに,家庭型保育室が通常の保育園と家庭で園児が見せる行動特徴を混合して生起させる場面であることを示していた。通常の保育園では多数の子どもと少数の保育士という構成が子どもに「公的」行動を促したのに対し、家庭型保育室は、養育者との濃密な接触と子どもの少なさにおいて家庭的な要素ももちつつ、非血縁の専門家のスキルに基づく育児が与えられるという意味で,子どもにとっては独自な居場所であることが示唆された。
また先島諸島における保育園の散歩時及び降園時前後に園児を追跡観察・活動量測定した予備的調査の結果からは,離島の保育が地域に埋め込まれ,周囲の人々の生活と自然に融合し,保育園児にとって地域が意味ある居場所として機能していることが示唆された。今後はそれらの成果をふまえ,さらに家庭・保育園・地域における大人と子どもの共生の姿を明らかにしたい。