表題番号:2007B-213 日付:2008/03/23
研究課題東アジアにおける社会的不平等と家族形成に関する国際比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 店田 廣文
(連携研究者) 人間科学学術院 教授 臼井 恒夫
研究成果概要
 本研究では、今年度、日本について主に少子高齢化に関連する研究課題の検討を行い、2008年度以降の研究準備として2つの課題を実施し一定の研究成果をうることができた。
 第一は、グランドペアレンティングに関する研究課題であり、高齢者と孫世代といった三世代家族の交流の現状や意識を探ることを目的に、さいたま市在住の60歳以上の高齢者252人(男107名、女145名、平均年齢70.6歳)を対象とする「祖父母と孫の交流に関する調査」の結果分析を行った。親しい孫の平均人数は2.5名であり、親しい孫への世話の経験者は全体の64.2%、孫を世話する理由として多くあげられていたものは「孫が身近な存在だから」、「健康で孫の世話をできるから」であった。親しい孫との連絡方法は主に「電話」であるが、月に1回から数ヶ月に1回の割合で直接会っていることが明らかとなった。
 第二は、高齢者の生きがいに関する研究課題である。高齢者の生きがいに関する実証研究では、生きがい感の測定に目的が置かれたために、これまで概念研究が示した生きがいの定義を捨象することによって進められてきた。本研究では、先行研究によって得られた知見から、生きがいが対象、感情、条件、帰結の四つの側面から捉えられると仮定し、それぞれの側面について自由記述式の回答を得た結果について分析した。調査は、2007年11月に埼玉県さいたま市在住の60歳以上の高齢者を対象として行われた。回収有効票数は314(有効回収率38.9%)である。対象者の基本属性の分布は、平均年齢が70.9歳、男女比が男性46.6%、女性53.4%となった。世帯構成は、本人のみ世帯11.8%、夫婦のみ世帯42.4%、子と同居世帯27.4%、孫と同居世帯12.4%となり、同居家族の平均人数は、2.6人であった。自由記述回答はテキストマイニングによりどのような構成要素が各問への回答を特徴づけているのかを探索的に分析した。生きがいの対象について、上位五位までのキーワードと構成比(全構成要素数に占める割合)は孫(4.8%)、自分(4.7%)、健康(4.0%)、家族(3.5%)、仕事(3.0%)となった。また生きがいに伴う感情については幸せ(5.5%)自分(5.4%)健康(4.7%)満足感(2.9%)元気(2.5%)となった。内閣府による調査等の結果では、孫や家族と団欒している時や趣味やスポーツに熱中している時等が上位の回答を占めているが、選択肢として「自分」の「健康」に「幸せ」を感じる時という本調査結果の上位を占める基本的なキーワードすら抜け落ちていることが明らかとなった。