表題番号:2007B-210 日付:2008/03/04
研究課題持続可能な消費のためのライフスタイルに関する産業連関的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 鷲津 明由
研究成果概要
持続可能な消費社会に向けて,消費生活を環境配慮的に方向付けるためのさまざまな方策について,各方面で活発に議論されるようになってきている。そして,衣食住に関わる消費者行動が,具体的にどのような環境影響を現状においてもっているか,それらを低減させるにはどうしたらよいか,低減策を採った結果どの程度の効果が得られるかなどについて考察が深められつつある。しかし,そのような中で,環境配慮行動をとった結果消費者の効用がどの程度変わるのか,環境配慮行動による効果が大きかったとしても消費者の不満足が著しくなることはないか,といった考察は効用測定の難しさもあり,これまでほとんど先行研究がみられなかった。そのような中で本研究では,経済モデルを応用し,環境配慮行動の結果を環境面と効用面から評価できる新しいモデル(主観的価格割引行動モデル)を開発した。そして,消費者を対象とする環境対策が実際にもたらした効果を,「環境効率(消費者行動の結果,実際にでてしまったCO2単位あたりが,消費者にどの程度の満足(円単位)をもたらしたかを示す)」という指標で評価することを試みた。
その結果,たとえば大阪地域で実施されたモビリティ・マネジメント(公共交通の利便性を消費者に気づかせ,無駄な自家用車利用を削減させるという啓蒙活動)は,環境効率指標を現状の303.1円/kg-CO2から310.4~314.5円/kg-CO2に,2.4~3.8%改善させるということが分かった。また,富山市で計画中のLRTを用いた市内電車の環状線化計画がもたらす効果としては,現状の環境効率指標を306.6円/kg-CO2まで改善できそうである。
また,リクリエーションサービスの需要や外食といった行動は,消費者の効用を著しく高める一方で,現状では環境負荷を大きくし環境効率を悪化させてしまう結果となった。しかしその場合も,余暇時間の使い方を工夫したり,住宅設備を工夫して光熱費の節減をしたりする行動と組み合わせれば,効用を増加させつつ,環境効率を改善できることが試算された。