表題番号:2007B-198 日付:2009/11/16
研究課題CERN-LHCによる最高エネルギー領域宇宙線相互作用の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鳥居 祥二
(連携研究者) 理工学術院 客員教授(専任扱い) 笠原 克昌
(連携研究者) 理工学術院 客員講師(専任扱い) 清水 雄輝
研究成果概要
本研究では、欧州共同素粒子原子核研究機構(CERN)で2008年中頃に稼動が予定されている世界最高エネルギーの加速器(LHC: Large Hadron Collider)を用いて、最高エネルギー宇宙線の解明に不可欠な相互作用の研究を実施する。このため、検出装置の製作後に、CERNでのビームテスト実験を実施して、装置性能の確認のためのデータ解析を実施した。そして、装置をLHCのATLASと呼ばれる装置の最前方領域に設置し、実験環境下での装置稼動性能について十分な性能評価を実施した。
 この研究は日欧米の共同研究であるが、我々は早稲田大学グループとして本特定課題のテーマとして、ビームテストとデータ解析を実施している。このため、さらに、シンチファイバーを用いた装置の開発、データ取得システムの製作を担当して所期の性能を実現し、本実験の実施に備えている。さらに、本年に実施が予定されている7TeV陽子同士の衝突実験だけでなく、将来の重イオン衝突実験に備えて、データ取得に必要な検出器の回路システムの高速化に関する開発研究をイタリアのグループと共同して開発している。具体的には、PACE3と呼ばれるアナログパイプライン機能を有するASICを用いて64アノード光電子増倍管の高速読み出しシステムの開発を実施した。このシステムの利用により、従来は困難であった高輝度ビームや重イオン衝突のような高頻度な2次粒子の計測が可能となる。
 このシステムの開発の成功により、陽子-陽子の相互作用だけでなく、原子核-原子核の衝突の測定も可能になり、これまで未解明であった最高エネルギー領域での宇宙線成分の研究にとっても大きな貢献が可能になることが期待されている。