表題番号:2007B-195 日付:2012/02/28
研究課題有機シラン単分子膜成長ダイナミクスおよび微視的構造解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 谷井 孝至
(連携研究者) 理工学部 日本学術振興会特別研究員 三宅丈雄
(連携研究者) 理工学部 日本学術振興会特別研究員 山本英明
研究成果概要
【背景と目的】成長メカニズムにおける基礎的な学理構築の必要性と単分子膜としての応用性の高さから、魅力的なソフトマターである有機シラン自己組織化単分子膜(SAM)を研究対象とし、大規模計算機シミュレーションによる予測と実験的検証の両面から成長過程の動的素過程を解析し、膜構造と膜質に関する微視的描像を解明することを目的として研究を推進した。有機シランSAMにおける最重要課題は、高い応用性が示されているにもかかわらず、実験的に膜構造を決定する手法に乏しく、その結果、構造が未解明なまま放置されていることに加え、成膜時に外場が与える影響によって、成長様式や膜構造が異なり、実験室単位で質の異なる膜を対象として議論がなされていることである。
【研究成果】
シミュレーションによる成果:
 ・同種分子を用いて成膜した有機シランSAMであっても、下地酸化膜との化学結合(アンカリング)の数と、単分子膜同士の
  架橋(クロスリンク)の数に違いがあり、これが異なる膜質の原因となっている。
 ・アンカリングやクロスリンクの数が増加すると、膜は結晶性(六方細密充填構造)からアモルファス構造に変化する。
実験による成果:
 ・液相で堆積したSAMと、気相で堆積したSAMの間には、成長過程とできあがる構造に大きな違いがある。
 ・液相で成長するSAMはデンドライト成長し、気相で成長するSAMは一様成長する。
 ・液相で成長するSAMは比較的結晶性を有するのに対し、気相で成長したSAMはアモルファスである。
 ・膜の結晶性は、気相/液相といった堆積方法の差でなく、成膜温度に直接的に起因するようである。
 ・有機シランSAMを電子線レジスト代替として用いる際の現像液であるHFに対し、結晶性を有するSAMより、アモルファスであるSAM
  の方が耐性がある。このことは、CVDで成膜したアモルファスのSAMの方が電子線レジスト代替として優れていることを示す。
 ・有機シランSAMの電子線照射に対する感度はSAMの末端基に大きく依存する。