表題番号:2007B-149
日付:2008/03/29
研究課題文化戦略としてのインフラストラクチュアデザインの実態分析と手法の開発
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 佐々木 葉 |
- 研究成果概要
- インフラストラクチュアとは、単に物理的・空間的な機能を効率よく満足するものというだけでなく、地域イメージの形成や創造的産業活動を支える文化的価値を有するものでもある、という認識の変化が具体的にどのように起きているかを、橋梁と駅を対象として日本国内における実態調査をおおなった。それぞれについて、過去20年程度の雑誌等のメディアに取り上げられたもの、あるいはデザインに関する賞を得たものを抽出し、各事例の設計におけるコンセプトの表現と具体的なデザイン上の特徴を明らかにした。調査方法は文献調査・現地調査・設計者へのヒアリング調査である。
橋梁については、造形イメージの表現・地域性の表現・調和の表現・アメニティの創造・シンボル性の表現にコンセプトの内容は大別される。橋梁形式や年代による明確な傾向はなく、また一つの橋梁のデザインコンセプトが複数にわたる例もある。これらが具体的な造形に展開していくプロセスは様々な構造を有している。またコンセプトが実体化していく過程で重視された事項は、当該橋梁の架設環境によって異なる。こうした事例分析から、橋梁の有する価値の多面性が具体的にどのように発想され具体化しているかが示された。
駅舎については、地域反映型・都市ランドマーク型・造形デザイン型といったタイプに分類される。各タイプごとに駅舎に併設される複合施設の有無や種別、外装デザインの特徴、周辺空間の整備状況などに特徴がみられることを明らかにした。
以上の事例調査から、橋梁に関しては構造物としての自己完結性が強いため地域戦略とった観点が必ずしも明確ではないが、そのデザインは狭義の機能を越えたものに展開している傾向が明らかとなった。今後はその事業方法も視野に入れた分析が必要である。駅舎については機能の複合性が顕著になりつつあり、その機能の内容と運営方法と構造物および空間デザインの関係の評価を今後検討する必要がある。