表題番号:2007B-147 日付:2008/03/25
研究課題下排水中に存在する極微量有害物質の高速・高効率電解処理
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 榊原 豊
研究成果概要
下排水中には種々の有機物や無機物が存在するが、更に極微量の医薬品や内分泌攪乱物質等が含まれている。本研究では粒状電極を充填した3次元電解槽を作製し、水環境中に高頻度で検出されている抗生物質(テトラサイクリン)、環境ホルモン(EDCs)及び女性ホルモン(E2)の処理能力について実験的検討を行った。
 その結果、これらの微量物質はPt電極および炭素電極(グラッシーカーボン(GC))を充填した電解槽により効率良く除去されることが分かった。ここで、排水中に多量に存在するフミン質に処理性能は影響されないが、尿酸が存在すると(低い酸化電位により)尿酸が最初に酸化除去され、その後、E2, TC, EDCs等が除去されることがわかった。また、処理速度はEDC等の液境膜移動速度に支配され、定常状態の処理水質を表す数学モデルを構築した。
 また、数学モデルに基づいて、電解槽をn分割すると処理性能は飛躍的に向上し、例えば処理槽の全容積を一定として、電解槽を2つあるいは3つに分割すると、処理水質はそれぞれ1/10、1/100に低下すると考えられた。特に女性ホルモン(E2)は数ng/lの極低濃度で魚類等に撹乱作用を与えることが報告されており、電解処理はこのような濃度域まで効率良く処理できることが示された。なお、EDC及びE2の電解処理では電極表面にポリマー状の酸化皮膜が形成され、定期的な電極再生が必要である。本研究でFenton法による電極再生について検討したところ、本法により酸化皮膜が数分間で完全に分解されることがわかった。処理に要する消費電力は数~数10Wh/m3程度であり、既往の酸化処理法に比べて数桁以上小さいことがわかった。
 以上より、電解処理は優れた処理性能を有するが、最適な電解操作条件、設計条件等については更に検討が必要である。