表題番号:2007B-140
日付:2008/02/22
研究課題構造と活性相関に基づくペプチド合成酵素の分子設計
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 木野 邦器 |
- 研究成果概要
- 我々は、多様な生理活性機能を有するペプチドの効率的な供給を目的として、ATPの加水分解反応を介し遊離アミノ酸同士の連結反応を触媒するアミノ酸リガーゼに着目し、特性の異なる新規アミノ酸リガーゼの探索や発現、当該酵素を利用した短鎖ペプチド合成プロセスの開発研究を実施してきた。一方、オリゴペプチドへの新たな展開を考え、その効率的な合成法を可能にする酵素としてCyanophycin合成酵素に着目した。本研究では、短鎖ペプチド合成酵素研究での知見を踏まえ、分子設計を中心としたタンパク質工学的な手法によるCyanophycin合成酵素からの新規なオリゴペプチド合成酵素の創製を目的とした。
Cyanophycinは、シアノバクテリア(藍藻類)が菌体内に蓄積するポリペプチド(分子量:25~100 kDa)で、Aspが-ペプチド結合をした骨格にArgがAspの-カルボキシル基でペプチド結合した構造を有している。この独特な構造に着目し、遊離のAspとArgからのCyanophycin合成、さらには遊離アミノ酸からの任意オリゴペプチド合成を可能とする酵素の存在可能性を推定した。そこで、ゲノム情報を活用し、種々のシアノバクテリアからCyanophycin合成酵素を取得し、活性評価を行った。その結果、Thermosynechococcus elongatus BP-1由来のCyanophycin合成酵素において期待する活性を見出すことに成功した。さらに、本酵素の基質特異性は、極めて厳密であることもわかった。また、本酵素が2つの活性ドメインを有することから、酵素の構造-活性相関に関する情報を得るために各機能ドメインでの分割を試みたが、いずれのタンパク質もペプチド合成活性を示さなかった。今後、本酵素特性の詳細な解析やドメインの分割位置の最適化を検討し、基質特異性等の機能改変へと展開していく予定である。