表題番号:2007B-139 日付:2008/03/24
研究課題原子配列構造の制御による化合物半導体の再構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 堀越 佳治
研究成果概要
GaN系Ⅲ族窒化物半導体は、紫外波長域における発光ダイオード、レーザーに加え、室内照明用発光素子の材料として注目を集めている。これらのデバイスの性能の向上には高濃度ドーピングによるp型GaNの特性改善が重要である。これまでに結合長がGaに比べて長いMgと短いBeを共ドーピングすることにより歪みを補償し、アクセプターの活性化率を向上させることを試みた。しかしながら歪みは補償されるものの、Be-Mg結合に起因する複合欠陥の導入により活性化率は上がらなかった。本研究では共ドーピングによる歪みの補償効果を維持し、かつBe-Mg結合に起因する複合欠陥を抑制するためにMgドープ層とBeドープ層を4 nmの短い周期で交互に成長する空間分離ドーピングを試みた。ラマン分光測定により、成長した結晶中の局所歪みの評価を行ったところ、共ドーピングした試料で観測された禁制A1(TO)モードが、空間分離ドーピングにより大きく減少した。このことは、Be-Mg結合に起因すると複合欠陥の抑制により、結晶の局所的な歪みが減少したことを示している。空間分離をより完全にするために、各ドープ層の間に4 nmのアンドープスペーサー層を挿入したところ、禁制A1 (TO)モードは消失した。また許容E2 (high)モードの半値幅はアンドープGaNと同程度であった。これらの結果は、スペーサー層を導入した空間分離ドーピングを用いることにより、歪みの補償を行うとともに、Be-Mg結合に起因する複合欠陥の生成を抑制し、高品質の結晶を成長することが可能であり、この手法がp型GaNの特性改善に有効であることを示している。