表題番号:2007B-138 日付:2008/03/24
研究課題AZ61マグネシウム合金における集合組織制御圧延技術の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 浅川 基男
研究成果概要
特定課題研究費終了報告「AZ61マグネシウム合金における組織制御圧延技術の開発」

本研究では,AZ61マグネシウム合金圧延板に曲げ加工を施すことによる双晶変形の導入が底面集合組織の分散に及ぼす影響に着目した.圧延板の底面集合組織の制御と曲げ成形性向上に関する新たな知見を得て,今後の使用拡大への貢献に寄与することを目的とする.
曲げ加工によるMg合金板の双晶形成を利用した集合組織分散についての研究例は極めて少ない.本研究では,圧延板に繰り返し曲げ加工を施すことで,引張り・圧縮ひずみを交互に繰り返し付与し,底面集合組織を分散させることを試みた.加工温度は,十分な転位を導入でき結晶粒微細化も期待できる冷間とし,板表面に3 %のひずみを付与できるパンチを用いて繰り返し曲げ加工を施した.その後,性質分析としてSEM-EBSPを用いて双晶形成に伴う集合組織変化を解析し,また,成形性評価には,実部材への適用範囲が広いV曲げ成形性試験を用いた.
その結果,AZ61マグネシウム合金圧延板において曲げ加工による,底面集合組織変化と曲げ成形性に関して以下の知見が得られた.
(1)曲げ加工をすると曲げ圧縮側に引張り双晶が形成し,繰り返し曲げ加工を施すことで底面集合組織が分散する.
(2)繰り返し曲げ加工を施す事で,従来のMg圧延板において困難であった冷間曲げ加工が,R/t=3(R:パンチ半径,t:板厚)で割れ・不良現象が発生することなくV曲げ成形可能となり,成形性の良好な圧延板が作製できる.
(3)繰り返し曲げ後の圧延板は,473 KにおいてR/t=1の厳しい条件で成形可能であった.繰り返し曲げ加工を施す事で底面集合組織が分散化し,成形性の良好な圧延板が得られた.