表題番号:2007B-134 日付:2008/02/23
研究課題超高速回転を支えるヘリングボーン動圧気体軸受の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 富岡 淳
研究成果概要
超高速回転体の開発は,発電機やコンプレッサ等のターボ機械の超小型化を可能にする.現在,このような超高速回転体の支持軸受には,静圧型の空気軸受が多く用いられている.しかしながら,静圧型の空気軸受では,圧縮空気源などの大掛かりな付帯設備装置を必要とする.そのため,支持軸受として動圧型の軸受を用いた方が,静圧型を用いた場合よりも軸受構造上の利点を生かした小型化が見込めると思われる.その一方で,一般に動圧軸受では,潤滑膜の特性に起因する自励振動によるホワール不安定性のために,超高速回転の実現は大変困難である.
そこで本研究では,ホワール不安定性が比較的少ないとされるヘリングボーン動圧気体軸受が超高速回転の実現に有効であることを提案し,開発することを目的とした.そのために,へリングボーン溝形状,軸駆動用タービン,圧縮空気供給用ノズル位置の影響等を検討した.さらに,超高速回転による軸の遠心膨張の影響はかなり大きくなるものと思われる.そこで,解析においては,軸の遠心膨張を考慮し,理論解析には線形法と非線形軌道法を用いた.また,実験を行ない,理論解析結果と比較検討した.
その結果,以下の結論を得た.
(1) 線形法を用いた検討の結果,遠心膨張を考慮すると,回転数が高くなるにつれて膜厚さが減少して溝の効果が最適化されることによって,遠心膨張を考慮しないときよりも安定性が向上したが,それ以上に回転数が高くなると最適値から遠ざかることにより不安定化した.
(2) 非線形軌道法による解析結果は,線形法において安定であった領域の点ではつり合い点に収束,安定限界付近の点ではリミットサイクル,不安定領域の点では発散し,両解析結果はよく一致した.また,両解析から得られた周波数比の値もよく一致した.
(3) 実験結果は本解析により得られた値とよく一致しており,遠心膨張を考慮した本研究によって超高速回転を支持するヘリングボーン動圧気体軸受の動特性が明らかになった.