表題番号:2007B-120 日付:2013/04/25
研究課題機械式血液循環シミュレータによる脳動脈瘤の治療支援技術の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 梅津 光生
研究成果概要
 脳動脈瘤の破裂は,血流による力学的な刺激が関与していると考えられている.現在の臨床では,瘤を発生部位や大きさ等から評価しており,血流の影響を踏まえた瘤破裂の予測評価技術の確立が求められている.そこで本研究では,破裂及び未破裂瘤4症例の瘤内流れを比較し,破裂に影響を与える流れ要素を検討した.
(1)実験対象の選定とモデル内流れの可視化
実験対象は,①破裂瘤:72歳 最大瘤径6mm②未破裂瘤:54歳 最大瘤径16mm ③未破裂瘤:64歳 最大瘤径11mm ④未破裂瘤:60歳 最大瘤径9mm の4症例とした.これらの3D-DSAデータを内部形状としたシリコーンモデルを,ロストワックス法を駆使して製作し,生体内頸動脈の力学的特性(1.4±0.4×10-3 1/mmHg)と合致するモデルを使用した.
ヒト内頸動脈の血流を再現する際には,作動流体に血液粘度と同値のグリセリン水溶液(粘度3.8 cP)を用い,平均流量は330mL/min,心拍数は70bpmとした.時系列PIV法により瘤内の流れ特性を定量的に評価した.
(2)モデル内流れの3次元構造
破裂例である①での主流はジェット状であり80cm/s以上の高速度を維持したまま瘤壁に沿って直進し瘤頭部に達していた.また,瘤頭部近傍に有するブレブ部分では,主流とは異なる2次流れを形成していた.②では,主流は瘤形状に沿わず瘤内部を通過して瘤頭部に達した.①と同様,ブレブ部分を含め主流の通らない領域において,2次流れを形成していた.これに対し,③と④の流れ形態は共通して①②と異なり,瘤形状に沿った旋回流を主流とし,常時主流の通らない領域はなく,2次流れは見られなかった.
 脳動脈瘤の形状は患者ごとに多種多様であるが,本研究により破裂・未破裂の違いに応じて瘤内流れは異なりその特性を差別化できる可能性が示された.今後は数値解析も含め大規模解析を行い破裂・未破裂を差別化する血流パラメータを検討していく予定である.