表題番号:2007B-118
日付:2008/04/07
研究課題ナノサイズ層状複水酸化物を用いた環境浄化素材の開発研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 山崎 淳司 |
- 研究成果概要
- NLDHは層状複水酸化物(Layered Double Hydroxides : LDHs)の一種で、陰イオンの吸着性能を飛躍的に向上させることを目的に、結晶子を10 nm程度に調整したものである。本研究では、NLDHを用いた一律排水基準に対応できる低濃度ホウ素・フッ素処理技術の開発を実施した。
粉末状NLDHは10~20 μm程度の凝集粒子である。粉末状NLDHの基本性能確認として、恒温室内で標準液及び実排水を用いた等温吸着試験等の各種基本試験を実施した。従来の処理法とは異なり低濃度溶液に対しても、吸着効果があることが認められた。
ホウ素系排水の事例として管理型産業廃棄物最終処分場に粉末状NLDHを利用するモデルプラント(Figure.3)を設置し、ホウ素吸着効果を確認した。試験に用いた排水のイオン濃度はホウ素:20 mg/L、硫酸イオン:1,500 mg/L、塩化物イオン濃度は5,000 mg/L程度であった。このような混在イオンが高濃度に存在する排水に対しても、粉末状NLDHを1.2 wt%添加することで、ホウ素の一律排水基準値の10 mg/L以下を満たすことを確認した。
フッ素系排水の事例として鍍金工場及び半導体工場に、中小事業所を対象とした省スペースで維持管理の容易なカラム式水処理装置を設置し、顆粒状のNLDHのフッ素吸着効果を確認した。その結果、フッ素濃度 20 mg/L以上で且つ硫酸イオン等が混在する排水に対しても、フッ素の一律排水基準値である8 mg/L以下を満たすことを確認した。
以上、本研究により開発されたNLDHは、幅広いpH領域(pH 4~11)でフッ素、ホウ素及び六価クロムなどの陰イオンを効率良く吸着でき、その用途としては、産業系排水の処理などさまざまな用途が期待できることを実証した。