表題番号:2007B-115 日付:2008/03/22
研究課題パターン活用環境による大規模知識再利用の実現に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 深澤 良彰
研究成果概要
 ソフトウェアパターンとは,ソフトウェア開発の各局面で繰り返し現れる問題に対する解法・指針である.ソフトウェアパターンを学習することにより,熟練したソフトウェア技術者が持つ様々な経験を,ソフトウェアパターンによって利用できるようになる.
 ソフトウェアパターンに関する取り組みの初期においては,パターンの収集が重要であるとされたが,現在では,すでに多数のソフトウェアパターンがWorld Wide Web (WWW) や書籍で公開されているため,今後の取り組みにおいては,パターンの収集と共に既存パターンの体系化が重要である.パターン体系は,対象パターン集合について,パターン間の関連を明確化し,利用や組み合わせのための指針を提供する
 現状では,パターン間関連の考察は,主に人手によって行われているが,パターン数の増加に伴って,関連を考察すべきパターン組の個数が爆発的に増加する.我々は,パターン間関連分析の自動化のために,文書類似度を基礎としたソフトウェアパターン間関連分析手法を提案してきている.本研究では,昨年度までに,すでに提案された分析手法とは異なるパターン間関連を得るために提案手法を拡張した.提案手法を用いることで,人手による多数のパターン間関連分析を支援することができることを確認した.
 これを本年度は以下のように拡張した.ソフトウェア設計には,ソフトウェア全体構造の設計から実装に近い詳細な動作の設計まで幅広い抽象度が存在するが,その分類は数段階のおおまかなものでしかなかった.さらに,あるパターンカタログに存在する多様な抽象度のパターンをすべて同列に扱っていた.本研究では,上述の問題に対処するためパターンの抽象度測定法および可視化手法を提案した.
 提案手法は以下の長所を持つ.(1)パターン間の半順序関係を用いることで,パターンカタログをまたいだ分析が可能である.(2)各パターン間の参照関係のみからパターン集合全体における位置づけとなる抽象度値が得られる.(3)2種類の可視化手法を用いることで,直感的な粒度の把握が可能である.