表題番号:2007B-109 日付:2009/04/24
研究課題低環境負荷型土壌洗浄プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大和田 秀二
研究成果概要
射撃場からの鉛汚染土壌を対象として、低負荷型の土壌洗浄プロセスの検討を行った。一般に土壌洗浄法では、水洗洗浄及び湿式篩いすることによって、粗粒部の浄化土壌と微粒部の汚染土壌に分離し、汚染土壌を減容化している。本研究においては、この汚染濃縮土壌に対し、さらに表面粉砕・分級の処理を加えることで、浄化土壌の回収量の増加及び汚染土壌の減容化を目指した。粉砕工程では、鉛分が濃縮していると予測される土壌粒子表面を選択的に粉砕することを意図して、特殊な混合効果を持つインテンシブミキサーを用いた粉砕を試みた。インテンシブミキサーの操作条件である回転数、含水率、粉砕時間について実験的に最適な条件を検討したところ、回転数900rpm(装置上の最小回転数)、含水率25%、粉砕時間2分の条件を得た。このとき、粉砕産物の粒度分布をフィードの粒度分布と比較すると、粗粒部ではほぼ一致しているが微粒部の割合が増大していることが確認され、表面粉砕が良好に進行していると予測された。
表面粉砕前後の鉛分の形態を、Tassirらによる連続抽出法によって検討したところ、表面粉砕は、特に、酸化鉄・酸化マンガン結合態や有機物結合態の形態で存在する鉛分に有効であることがわかった。汚染土壌に比較的多く含まれている炭酸塩態の鉛分には、表面粉砕はそれほど有効でなかったことから、表面粉砕のみでの土壌の完全浄化は困難であると考えられる。
さらに、離散要素シミュレーションを用いてインテンシブミキサー内の土壌粒子同士の衝突エネルギーの算出を行った。インテンシブミキサーは、パンとアジテータが互いに逆方向に回転して粉砕を行っているが、アジテータは垂直方向の、パンは水平方向の攪拌性を向上させる役割を持っていることがわかった。また、パンとアジテータの両方を回転させることによって、全体の攪拌性が安定することが確認された。さらに、回転数と、粒子同士の衝突エネルギーの接線方向と法線方向の差との関係を検討したところ、900rpmにおいて最も接線方向の衝突エネルギー割合が増加することが確認され、900rpmで最も良好に表面粉砕が生じるという実験事実との整合性が確認された。