表題番号:2007B-097 日付:2008/03/26
研究課題生体分子モーター系における階層的機能構築のメカニズム
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 石渡 信一
研究成果概要
昨年度までの研究を推進。とくに、筋収縮系が示す自発的振動収縮(SPOC)現象のメカニズムについて、実験、理論の両面から研究を進めた。実験面では、単一筋原線維を2本の微小ガラス針で釣り、さまざまな溶液条件下での発生張力と張力振動を繰り返し記録することができる実験系を確立し、それを活用して、中間活性化条件における力学特性を系統的に調べた。その結果、異常な筋節長-発生力関係を見出し、Shimamoto, Y. et al. (2007) “Nonlinear Force-Length Relationship in the ADP-Induced Contraction of Skeletal Myofibrils”としてBiophys. J. 93, 4330-4341. に発表した。この論文は高く評価され、同じ号にNew and Notableとして取り上げられている。1分子レベル研究では、過去数年に亘って継続研究しているMyosin VあるいはVIとアクチンフィラメントとの1分子結合破断力を測定し、負荷方向依存性や、ADP濃度依存性に関する新しい知見を得、それをモデルに基づいて解析した結果を、現在国際誌に投稿中である。一方、高次構造レベルでの研究では、カエル(Xenopus)卵から抽出した染色体分裂装置の力学特性を、カンチレバーを用いて計測し、硬さ(バネ定数やヤング率など)に関する新しい知見を得た。この結果についても、現在国際誌に投稿中である。このように、生体分子モーター系の様々な階層における、機能特性と力学特性との相関について、全く新しい知見を得つつある。その成果は、主に日本生物物理学会やアメリカ生物物理学会で発表するとともに、国際的な雑誌を通じて公表する予定である。