表題番号:2007B-094 日付:2008/03/03
研究課題窒化物半導体のフェムト秒超高速スピン緩和の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 竹内 淳
研究成果概要
ワイドギャップ半導体の超高速スピン緩和の解明として、GaInNAs/GaAs量子井戸のスピン緩和時間を測定した。GaInNAs量子井戸は波長1.2-1.3ミクロン付近で発光するため、光通信用の発光デバイスへの応用が期待されている。この応用上魅力的なGaInNAs量子井戸のスピン緩和時間の実測例としては、これまでに77-133psという報告と、2 nsという2件の報告があり、スピン緩和時間に1桁もの大きなひらきがあり混乱を生じていた。

我々は、時間分解フォトルミネッセンス分光によって、GaInNAs/GaAs量子井戸のスピン緩和過程を調べた。その結果、光励起後、200psまでは観測できる寿命の短い1.07eVのPLピークと、それとは独立に1.035eVにある長寿命のPLピークがあることを発見した。この二つのピークのスピン緩和時間を測定したところ、非局在励起子によると思われる1.06eVのピークは192psのスピン緩和時間を持つのに対して、局在励起子によると思われる1.035eVのピークは2nsという遅い緩和時間を持つことが明らかになった。

これまで、GaInNAs量子井戸のスピン緩和時間には二説あり混乱を生じていたが、本研究によって、PLピークが二つあり、それぞれのスピン緩和時間が大きく異なることが初めて明らかになった。この問題が解決したことは、GaInNAs量子井戸の今後のスピン緩和メカニズムの解明と応用において大きな意味があると考えられる。

 なお、この研究結果は、早速 Applied Physics Letters に投稿し、2008年早々にVol.92, p.051908 に掲載された。