表題番号:2007B-092 日付:2012/05/21
研究課題病院病棟の管理実態にもとづく災害時人命安全計画
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 長谷見 雄二
研究成果概要
病院病棟は、診療科によっては自力避難できない患者が数多く存在し、火災等の災害時に人命危険が及ぶ前に避難完了させるには病院職員の介助を前提とする避難を機能的に行う必要がある。しかし、病棟の避難で一般に想定されるストレッチャー等を用いた担送避難等については病室での担送器具への移動、避難先での担送器具からの移動等を含む避難時間の予測自体に困難があり、介助避難を合理的に計画する基盤は脆弱であった。
本研究では、ストレッチャー、シーツ、車椅子を使用した介助避難を想定して、病因病等で多数の患者が同時に避難する状況を反映させた避難行動実験を、実際の病院病棟階において改装のため不使用となる期間を利用して実施し、それをもとに病院病棟における群集介助避難時間を予測するモデルを作成した。更に、本モデルに基づいて、病院病棟の平面計画と夜間管理体制が、病棟における群集避難時間にどう影響するかを明らかにし、病院病棟の防災計画やその評価の基盤となる手法として提案した。
 一方、本研究では、神経内科、小児科等では自力避難できない患者比率が極めて高く、この防災計画手法では、日常的な医療行為と合理的な避難計画を両立させるのは極めて困難であるとの見通しが得られた。そこで、火災時でも出火室以外の病室は避難しなくても在室患者の人命安全を維持できる「災害時避難不要病棟」の概念を考案して、その技術的可能性を検討した。それには出火室の排煙・共用廊下の加圧、出火室間仕切りを通じる延焼防止が必要であるが、病室では火災荷重が小さく、他室との間の区画性も高いことから、火災継続時間は短く、壁を介する延焼防止は容易であること、居室の必要排煙量は一般的な排煙と特に変わらないこと等を明らかにし、避難不要病棟とする上で特に検討が必要なのは共用部分の加圧を確実にするための平面計画と、遮煙性を確保できる病室扉の開発のみであり、技術的実現可能性が高いことを明らかにした。