表題番号:2007B-090 日付:2008/03/10
研究課題各種生分解性高分子の誘電特性支配因子の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大木 義路
研究成果概要
 環境負荷の低い材料として、生分解性高分子が注目を集めている。多くの生分解性高分子のうちでポリ乳酸(PLA)は、電気特性もある程度調べられており、コンピューターや光ディスク基板等に使われ始めた。PLAの電気特性に大きな影響を与える因子は、結晶化度と温度である。例えば、PLAの導電率や誘電率は、ガラス転移温度(=68℃)を超えると急増する。これは、ゴム状態においてはミクロブラウン運動が起こり、カルボニル基など双極子の配向分極や、おそらくはイオン性と思われる電荷の移動が容易になることを反映している。本研究では、上記PLAに加えて、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート(PCL-BS)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、さらに比較のために低密度ポリエチレン(LDPE)と架橋ポリエチレン(XLPE)を試料として電気特性のいくつかを調べた。結果を概観すると、室温で可撓性を有するPCL-BS、PBSは、電流が流れ易く他の絶縁性能も悪い。逆に、電流が流れにくく絶縁性能の良いPLLAやPETSは可撓性に乏しい。すなわち、可撓性が必要で、かつ、厳しいスペックの要求される絶縁材料として、直ちに使用可能な生分解性高分子はない。但し、機械的強度は必要であるが、可撓性は要求されない場合には、PLAは有望な材料である。このことが、PLAが実際に民生用電気機器の筐体等に使われ始めた理由であろう。高温での物性に劣るといった問題点があるものの、添加剤や他の高分子とのブレンド等による改質も可能なPLAについては、今後ますます多様な利用が進んでゆくと思われる。また他の生分解性高分子については、PLAとのブレンド材として使用可能なものがあると思われる。