表題番号:2007B-088 日付:2008/03/25
研究課題異相界面制御を用いた高機能磁性薄膜の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 逢坂 哲彌
(連携研究者) 理工学術院 教授 朝日 透
(連携研究者) 高等研究所 客員准教授(専任扱い) 杉山 敦史
(連携研究者) 理工学総合研究センター 助手 吉野 正洋
研究成果概要
 ハードディスクドライブ(HDD)の高性能化は従来のPC外部記憶装置に加え、携帯型の情報家電といった新たなアプリケーションを創出している。本研究では電気化学的「界面制御」を基に、次世代HDDに必須な「均質性に優れた磁性ナノ結晶粒子(構造体)の集積磁性薄膜」の開発をドライとウエットプロセスの異なる2つの材料作製手法を用いて試みた。
 ドライ法については、我々が世界に先駆けてスパッタリング法を用いて垂直磁気異方性の発現に成功したSmCo5薄膜への第3元素の添加と一軸結晶磁気異方性(Ku)の関係について調査した。その結果、SmCo5C層の下地膜としてCu層を用いることでSmCo5膜に高いKuの付与が認められた。さらにCu層中への炭素の導入により、磁性層の磁区が微細化し、磁化反転機構がより一斉回転型に変化することを見いだし、薄膜の磁区及び磁気特性の改質に成功した。また,磁気記録の録再試験を行ったところ,記録再生特性の向上が確認された。
 ウエット法については、SmCo5膜同様に次世代記録層材料として有望視されているFePtナノ粒子の作製を化学的合成法により試みた。本化学的合成法は、還元剤と熱分解による2つの還元反応が組み合わさって粒子成長が進行する系であり、それぞれの還元プロセスが起こる温度範囲は50℃以上も異なっている。このため本研究では合成時の温度がナノ粒子の結晶構造へ与える影響を精査することから開始した。その結果、熱分解温度およびその後の粒子熟成温度の制御により、L10規則化に適した結晶性の向上が認められた。また物理的形状も異方性を有する粒子(直方体形状ナノ粒子)を得られることが明らかになった。
 本研究成果は、学術講演発表18件 (国際12件(招待2件))を通した公表と2件の特許出願をするとともに、テラビット級磁気記録材料の指針を示した。