表題番号:2007B-057 日付:2008/03/18
研究課題放物型ー双曲型方程式系の初期値・境界値問題とその数値解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 小林 和夫
研究成果概要
非線形双曲型保存系研究および非線形退化放物型(双曲-放物型)方程式に対する初期値・境界値問題の
非有界なエントロピー解について研究を行った。
 非線形双曲型保存系については、2×2保存型方程式系のリーマン問題:
u_t +f(u,v)_x=0, v_t +g(u,v)_x=0,  
(u(x,0),(v(x,0)) = (u_0,v_0) (x < 0 のとき), = (u_1,v_1)(x > 0 のとき), 
を次の条件の下で考察した。
条件:f, g は(f_v)(g_u) > 0 を満足する2回連続的微分可能な関数で、かつベクトル値関数F(u,v)
= (f(u,v), g(u,v)) は、 (l_i)(∇^2 F(r_i,r_i)) > 0 , i, j = 1,2,  を満足する。
ここで l_j, r_jはそれぞれ F(u,v)のj-左固有関数、i-右固有関数である。
次の結果を得た。
定理. λ_1(u,v) < λ_2(u,v) を F(u,v) の実固有値とする。このとき、任意のu-v平面の点P_0を
出発点としショック速度をσ_i(u,v) とするショック曲線S_i(P_0)と逆ショック曲線S'_2(P_0)で次の
安定条件(1)-(4)を満たすものが大域的に存在する。 
(1)λ_1(u,v)< σ_1(u,v) < min {λ_1(u_0,v_0),λ_2(u,v)}, (u,v) \in S_1(P_0)
(2)λ_1(u_0.v_0)< σ_1(u,v) < min {λ_1(u,v),λ_2(u_0.v_0)}, (u,v) \in S’_2(P_0)
(3)max{λ_1(u_0,v_0), λ_2(u,v)} < σ_2(u,v) < λ_2(u_0,v_0), \in S_2(P_0)
(4)max{λ_1(u,v), λ_2(u_0,v_0)} < σ_2(u,v) < λ_2(u,v), \in S’_2(P_0)

退化放物型方程式の初期値・境界値問題については、これまでに知られているL^∞解に対する結果を、
非有界なL1解に拡張する研究を行った。退化放物型方程式に対する初期値-境界値問題の有界な
エントロピー解(L^∞解)に対する比較定理は、これまでは、比較定理より弱いL^1縮小性定理が
Carrillo(1999)と Massia et al.(2002)等によって、Kruzkohの2変数法を用いて証明されていた。 
本研究ではP.L. Lions等により開発されたkinetic formulation法を初期値-境界値問題に適用できる
ように改良し、それらの結果をL1の枠組みにおける(非有界な)エントロピー解に対する比較定理に
拡張した。