表題番号:2007B-044 日付:2011/01/15
研究課題中唐における文学活動の地域性と文学理論の展開に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助手 土谷 彰男
研究成果概要
報告者は、先に「中唐期における文学活動の地域性と文学理論の展開についての考察」を行い、そのなかで、中唐初期における韋応物を中心とした蘇州文壇について、この文壇が中央朝廷と対峙することによって形成されたその具体相を示した。本研究においては、その成果を踏まえたうえで、この文壇の後世への影響について、とくに、これまで作家研究において韋応物との関連が指摘されてきた白居易に関して、彼の評価を手がかりとしてこの文壇が如何なる影響を及ぼしていたのかを考察した。その結果、蘇州文壇の形成によって韋応物の文学が「雅韻」の評価のもと、この時期の蘇州の士大夫文学の規範として受容されていたこと、これは白居易ばかりでなく劉禹錫にも同様の影響が確認できることを指摘した。

そもそも徳宗朝廷の規範的な文学に対峙するものとして蘇州文壇の形成をみたのではあるが、この文壇の文学が後世においては規範的なるものへと転回したことは、この時代の文学を観察することにおいて、有意の成果を得たと考える。